| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の二

 
前書き
◇今話の登場ハンター

◇ロエーチェ
 「伝説世代」の1人であるビオの同期だった女ハンター・テリルを慕っていた太刀使いであり、全ての「二つ名」を狩猟することを目指しているストイックな美女。武器はヒドゥンサーベルを使用し、防具はギザミシリーズ一式を着用している。当時の年齢は25歳。
 ※原案はX2愛好家先生。

◇クゥオ・アルグリーズ
 「伝説世代」の1人であるカノン・アルグリーズの異父妹であり、兄を追ってハンターになった生真面目な美少女。武器は睡りを誘う貝剣斧Iを使用し、防具はドロスシリーズ及びメデュレトシリーズの混合装備を着用している。当時の年齢は20歳。
 ※原案は疾風。先生。
 

 

 老山龍の侵攻を阻止するべく火を噴いた、無数の大砲。その砲口から放たれた砲弾は1発たりとも外れることなく巨龍の全身に命中し、霧の中からも良く見えるほどの爆炎を上げていた。

 だが、その猛攻を浴びてもなお老山龍の勢いは全く衰えていない。悲鳴にも似た咆哮を上げながらも、70mにも及ぶ巨大な龍はそのまま砦の最奥を目指して前進し続けている。

 それでも、攻撃が全く通じていないわけではない。その証拠に老山龍の頭部にある巨大な一角には、大きな亀裂が走っている。
 決してクサンテ達を見捨てまいと準備を急ぎ続けてきた彼らの奔走が、功を奏しているのだ。砲撃は間違いなく、効いている。

「あのイノシシ姫、無茶ばっかりしてるんじゃないわよッ……! 私の目の前で誰かが犠牲になるなんて……そんなの、絶対に許さないんだからッ……!」

 ギザミシリーズの防具を纏い、ヒドゥンサーベルを背負っている女性ハンターことロエーチェも、その1人だった。

 「伝説世代」の1人としてその名を馳せているG級ハンターのビオと――今は亡き(・・・・)彼の同期・テリル。
 2人と同じ村で生まれ育ったロエーチェは、同性かつ一足早くハンターになったテリルに憧れ、彼女と同じ太刀使いを志した……の、だが。そのテリルは6年前、「恐暴竜」ことイビルジョーとの戦いで命を落としてしまったのだ。

 彼女の死はビオを修羅に変え、ロエーチェの心にも深い影を落とした。それでも彼女は、「二つ名」のモンスターを全て狩猟するという目標を胸に、前を向こうとしている。

 イビルジョーとの遭遇さえなければ、テリルならきっと今頃、ビオにも負けないハンターになれていたはず。だからこそ自分が彼女の分まで、その域に至らねばならない。
 その強い想いが今は、彼女を上位昇格へと駆り立てている。そしてそんな過去を背負って来た彼女だからこそ、自分と共に戦って来た仲間を決して死なせまいとしているのだ。

 テリルを失ったこと。テリルの死を受けて、ビオが変わってしまったこと。その二つの悲しみを目の当たりにしてきた彼女は、運ばれて来た砲弾を矢継ぎ早に大砲に積み込み、点火を繰り返している。
 もうこれ以上、自分の大切な仲間を死なせるわけにはいかない。あんな悲しみを、繰り返させるわけには行かない。その執念が成せる鬼気迫る覇気が、彼女の前身に漲っているようだった。

「……ロエーチェさん、次の砲弾です! 使ってくださいッ!」
「ありがとう、クゥオ!」

 そんな彼女の横顔を見遣りながら、ずっしりとした砲弾を抱えて来たクゥオ・アルグリーズは、共に上位を目指して来た仲間にその砲弾を託していた。

 睡りを誘う貝剣斧Iを背負っている彼女は、ロエーチェの同期であり――「伝説世代」の1人であるカノン・アルグリーズの異父妹であった。ドロスシリーズとメデュレトシリーズの混合装備を纏っている彼女は、生家を飛び出しハンターになった兄を追うために、その道を選んでいたのである。

 ――2人の母は高貴な身分の美少女だったのだが、とある身分の低い男と恋に落ち、実家を飛び出したことがあった。しかしその恋人は、モンスターに襲われ帰らぬ人となってしまったのである。
 その後、彼女はアルグリーズ家に連れ戻され、本来の婚約者と改めて結ばれることになったのだが――その時すでに、彼女はカノンを身籠っていたのだ。それから数年後にはクゥオが産まれたのだが、2人が兄妹と認められることは終ぞなかった。

 身分の低い男の血を引いていたカノンは激しく冷遇され、アルグリーズ家の嫡子として認められたのはクゥオ独りだった。だが、クゥオ自身にとってのカノンは、たった1人の大切な兄だったのである。
 それでもカノンは――自分さえ居なくなれば、くたばってしまえばとアルグリーズ家を去ってしまった。「目障りな小僧が自分から消えてくれた」と喜ぶ当主は、愛娘から軽蔑の目で睨まれていたことにも気付かなかった。

 そして、数年後。ついにはクゥオまでもがアルグリーズ家の制止を振り切り、敬愛する兄を探す旅に出てしまったのである。それは奇しくも、身分の低い男と駆け落ちした母の背を想起させるような旅立ちであった。

 だが、今のクゥオは実家に戻るしかなかった母とは違う。アルグリーズ家が力尽くで連れ戻せるようなか弱い女ではない。クサンテやロエーチェらと共に上位昇格を目指している、一端のハンターなのだ。

(テリル姉のような、悲しい犠牲なんて……もう絶対に繰り返させないッ! 絶対上位に昇格して、ビオ兄に追い付くんだッ! テリル姉の分までッ!)
(カノン兄様に会うまで、私は絶対に負けられないッ……! アルグリーズ家がなんと言おうと、カノン兄様は私の最愛の人! あの人に会いたいと願う私の想いだけは、誰にも邪魔させないッ!)

 ロエーチェとクゥオ。彼女達はそれぞれの胸に、命を懸けるに値する信念を刻み込んでいた。
 戦う理由は違えど、向かう先は同じ。きっと、この戦いに参加している全員がそうなのだと信じて、彼女達は大砲を撃ち続けていた。

 ――だが、そんな彼女達の奮戦を嘲笑うかのように。老山龍は、大地を揺るがし侵攻を続けている。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧