八条学園騒動記
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第六百六十二話 気付けば二本その六
「自国の牛や羊を買わせてな」
「食べさせようとしていたんですね」
「そうであったがな」
「今は普通に食べていますね」
「うむ、そしてその鯨もな」
「博士はお好きですね」
「刺身にしても竜田揚げにしても好きでな」
それでというのだ。
「そのステーキも好きでベーコンもさらしもじゃ」
「この前ハリハリ鍋食べてましたね」
「あれも好きでな」
「鯨もよく召し上がられますね」
「そうしておる、そして魚介類を楽しむ時は」
博士はさらに話した。
「日本酒か白ワインじゃ」
「どちらかですね」
「気分によって変わる」
その時飲むものはというのだ。
「そうなっておる」
「そうですね」
「しかしフランス料理で日本酒を飲む様なことはな」
「しないですね」
「ある漫画でフランス風に生牡蠣を食べる時に日本酒を持って来て飲んでおった新聞記者がおったが」
二十世紀後半の日本の似非グルメ漫画である、オールバックに黒スーツのゴロツキの如き新聞記者が主人公であった。その主人公の行いである。
「それは野蛮じゃ」
「フランス料理なら白ワインですね」
「それを飲むものじゃ」
「それが筋ですね」
「紳士なのじゃ」
「そうですよね」
「普通はせん、メニューにないならな」
それならというのだ。
「わざわざじゃ」
「持ち込んで飲まないですね」
「そうじゃ、しかしな」
「その新聞記者はそうしたんですね」
「それでこれが一番合うとじゃ」
「言ったんですか」
「そして皆納得した」
作中ではそうなったのだ。
「白ワインだと今一つ合わないとなってな」
「いや、合うでしょ」
野上君はすぐに言った。
「生牡蠣と白ワインはな」
「そうであるな」
「確かに日本酒とも合いますが」
「どちらとは言えぬのう」
「ええ、それにそもそもです」
「当時今でもじゃがフランス料理では日本酒は飲まぬ」
博士ははっきりと述べた。
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