ハッピークローバー
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第二十五話 満足している姉その十
「本当の勝ち組はね」
「自分を幸せって思える人ね」
「そう思うわ」
「それだけのことね」
「ご飯食べられてお家に住めて」
そうしてというのだ。
「お金があればね」
「もうそれでよね」
「幸せでしょ、それで趣味を満喫出来たら」
「尚更ね」
「そう、幾ら出世して大金持ちになっても」
それでもというのだ。
「不平不満ばかりでいつも嫌な気持ちだったら」
「不幸せよね」
「逆にお金がなくてもね」
「幸せって思える人なら」
「幸せよ」
「出世していなくても」
「その辺りのおじさんおばさんでもね」
そうした立場でもというのだ。
「いいのよ」
「そんなものね、幸せって」
「しかも贔屓のチームが強かったら」
「阪神ね」
「言うことはないでしょ」
「阪神が毎年優勝していて」
そして日本一になってというのだ。
「幸せね、実際ね」
「もっと言えば応援出来るチームがある」
妹にワインのコルクを開けつつ話した。
「それだけでね」
「幸せね」
「急に阪神なくなったらどう?」
「死ぬわよ」
富美子は真顔で即答で返した。
「その時はね」
「そうでしょ」
「ええ、もうね」
ここでも即答であった。
「阪神がなくなったらね」
「私もそうよ、そう考えたらね」
「応援するチームがあるなら」
「もうね」
「それだけで幸せね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「その時点でね」
「何か切実な言葉ね」
「実際にそうした話もあったからね」
「応援しているチームがなくなることも」
「ええ、だから阪神が存続し続けるなら」
それならばというのだ。
「幸せの原点にあるのよ」
「そうしたものなのね」
「それで毎年最下位じゃなくてね」
「それだと尚いいのね」
「暗黒時代を思えば」
八十年代後半から二十一世紀に入るまでだ、阪神は実に長い間暗黒時代にあり様々な苦難のネタを提供してきた。
「そうでしょ」
「物凄かったのよね、あの頃」
「私も見てはいないけれどね」
二人が産まれる前のことである。
「もうピッチャーは大事な時に打たれて」
「その失点を返せなくて」
「打線は兎に角打てなくて」
それでというのだ。
「エラーは出て助っ人はね」
「バースの再来って言われて」
「全然打てなくて」
「すぐ帰国ね」
「そんな状況が続いてね」
そうしてというのだ。
「毎年最下位、カープとヤクルトには負け続き」
「巨人にも負けてたけれど」
「この二球団には特に念入りでね」
何故か阪神は伝統的にカープには弱い、これはどうしてであろうか。
「それで運にも見放されて」
「毎年最下位だったのよね」
「それからね」
その時を思えばというのだ。
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