展覧会の絵
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第四話 インノケンティウス十世像その六
「入塾テストの手続きをしたいのですか」
「あっ、君確か」
その十字の顔を見てだ。その美人はだ。
顔を明るくさせてだ。こう言ったのである。
「山村さんと一緒に見学してた」
「あの警備員さんは山村さんというんですか」
「そうなのよ。とてもいい人でしょ」
「はい」
美人の事務員は彼のことから話すのだった。
「親切で穏やかで」
「一緒にいたから」
その警備員の人とだというのだ。
「見てたのよ。それでね」
「それでなのですか」
「いや、君モデルさん?制服は八条学園高等部の中の一つだけれど」
「モデルではないです」
そのことははっきりと否定する十字だった。
「八条学園高等部には通ってますが」
「そこの生徒さんよね。そうそう、それでね」
「はい、入塾テストですが」
「今から手続きしてね」
そうしてだというのだ。
「すぐに受けるのね」
「そうさせて下さい」
「わかったわ。それじゃあ科目は五つだから」
そしてその科目のこともだ。事務員は十字に話した。
「数学に英語、国語に社会に理科」
「国語や社会の詳しい科目は」
「選択よ。どれを受けるの?」
「国語は現国を」
まずはそれだった。
「そして社会は世界史、理科は生物をお願いします」
「わかったわ。じゃあ選択はそれでいいわね」
「では早速」
手続きはすぐに済ませてだ。それからだった。
十字はその事務員に事務室の奥の部屋に案内された。そこは白い部屋だった。
ボード板にそれとプラスチックと鉄パイプで造られたの白と黒の机と椅子数個ずつある。十字はそのうちの一席に座らさせられてだ。そのうえでだ。
事務員にだ。こう言われたのである。
「じゃあ時間は一科目ごとに五十分よ」
「日本のテストの時間ですね」
「そうよ。その時間でね」
「解答をしてですね」
「そうして提出して。そうしてくれるかしら」
「わかりました」
「早く終わったらすぐに出していいから」
それもいいというのだ。
「そうしたら次の科目のテストを出すから」
「では早く終わらせることもできるんですね」
「見直しはした方がいいわよ」
これは事務員の親切から来る言葉だった。
「それじゃあまずは数学からね」
「では早速」
「試験官は私がするから」
何気なくだ。事務員は役得を選んだ。十字の顔を見て微笑んで言ったのがその証拠だった。
「宜しくね。それにしてもね」
「何でしょうか」
「君本当に奇麗な顔してるわね」
十字の白い、中性的な顔を見つつだ。事務員はうっとりとして言ったのである。
そしてそのさらりとした輝きのある金髪も見てだ。また言ったのだった。
「髪だって金色で。天使みたいだわ」
「天使ですか」
「ハーフよね。それでなのよね」
何処か芸能人を見る様な感じの言葉になっていた。
「君そんなに奇麗なのよね」
「確かに僕はハーフです」
このことはだ。十字も認めた。
「父はイタリア人で母は日本人です」
「そうなの。やっぱりハーフなの」
「両親は今はイタリアにいて別々に暮らしています」
このこともだ。十字は述べたのだった。
そしてそのうえでだ。また言う彼だった。
「ですが天使と仰いましたが」
「ええ。とても奇麗だから」
ついそう言ってしまったというのだ。
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