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イベリス

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第五十六話 犬も太るのでその一

                第五十六話  犬も太るので
 咲は朝早く起きた、その時もう朝ご飯の支度をはじめていた母にお互いに挨拶をした後で言われた。
「モコにご飯あげてね」
「ああ、まだなの」
「そう、だからね」
「今からなのね」
「モコにあげてね」
「わかったわ、モコ今からご飯あげるわね」
「ワンワン」
 ケージの中にいるモコも嬉しそうに鳴いた、そして皿にドッグフードと水が入るとすぐに食べはじめた。
 そのモコを見てだ、咲は母に言った。
「モコ最近太った?」
「体重そんなに変わらないわよ」
 母は料理をしながら答えた。
「別にね」
「そうなの」
「あんたの気のせいよ」
「何かそんな気したけれど」
「毛を短くしたでしょ」
 夏に合わせてというのだ。
「それで体型が出てよ」
「そう見えるだけ?」
「お肉がだぶついている様にね」
「それだけなの」
「昨日体重測ったけれどね」
 それでもというのだ。
「別によ」
「体重変わってないのね」
「そうよ」
「ならいいけれど」
「というか太って見えるなら」 
 今度は母の方から言ってきた。
「前の方がでしょ」
「毛がむくむくしていた方がっていうのね」
「そうよ、太って見えるでしょ」
「そう言われるとね」
 咲も否定しなかった。
「そうね」
「そうでしょ、トイプードルだとね」
 この種類の犬ならというのだ。
「もこもこした毛だから」
「太って見えるわね」
「毛が長い方がね」
「そう言われるとそうね」 
 咲もそれはと頷いた。
「言われてみれば」
「そうよ、あとモコ身体は小さいけれど」
「その身体のわりに元々体重あるのよね」
「トイプードルはそうでしょ」
「身体つきがっしりしてるわね」
「今もそうでしょ」
「ええ、わかるわ」
 咲もそれはと返した。
「見てもね」
「だから太ったと見えるかも知れないけれどね」
「元々の身体つきね」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「だから本当にね」
「太ってないのね」
「そもそもモコよく動いてるでしょ」
「一日二回お散歩に行ってるわね」
「雨の日でもレインコート着てね」
 小型犬様のそれをだ。
「モコは濡れても平気というか好きだけれどね」
「お水好きだしね、モコ」
「泳ぐこともね」
「それもトイプードルだから」
「狩猟犬でね」
「お水に入ってそこに撃たれて落ちた水鳥持って来る為の犬だったから」
「だからよ」
 その為に生み出された種類の犬だからだというのだ。 
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