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ハッピークローバー

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第二十五話 満足している姉その三

「命の危険がある位だから」
「出世出来ないわね」
「出世どころかね」
 まさにそれどころかとだ、美奈代はチーズを食べつつ話した。
「死にそうなのに」
「出世とか無理よね」
「そうよ、健康管理が出来ないとか言っても」
「レベルがあるわね」
「そこまで太ってるからね」
「危ないわね」
「それでパヴァロッティもね」
 その彼もというのだ。
「普通に百キロ超えていてね」
「百二十キロオーバーもあったから」
「ダイエットもして」
「その時はこのワイン断ってたのね」
「そうだったみたいよ」
「そんなことがあったの」
「そしてその泣く泣く断ったってわかるわ」
 美奈代はしみじみとした口調で述べた。
「これだけ美味しいならね」
「本当に美味しいワインね」
「私もこのワイン飲んでると幸せだから」
 ここまで美味しいからだというのだ。
「わかるわ」
「お姉ちゃんも」
「ええ、ワインとしては安くてしかも美味しくて」
 そしてというのだ。
「飲みやすいから」
「それじゃあよね」
「もうね」  
 それこそというのだ。
「最高のワインよ、とはいっても世界中のワイン飲んだ訳じゃないけれどね」
「ワインって言っても多いしね」
「日本も造ってるしね」
「山梨とかでね」
「けれど言うわ」
「このワインは最高だって」
「そうね、イタリアも大好きよ」
 このワンブルスコワインを産する国もというのだ。
「本当にね」
「そうなのね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「イタリアに住むには問題があるわ」
 美奈代はこうも言った。
「一つね」
「その一つって何?」
「飲んだら最後は何かしら」 
 自分の向かい側に座って飲んでいる妹に問うた、二人共顔は真っ赤になっていて明らかに酔いがかなり回っている。
「一体ね」
「決まってるでしょ、お茶漬けよ」 
 富美子は即座に答えた。
「一択でしょ」
「それがないのよ」
「イタリアには」
「というか日本以外の国にはね」
「そこがネックね」
「イタリアにもお米はあるわ」
 肝心のそれはというのだ。
「それ自体はね、けれどね」
「それだけじゃね」
「お漬けものとか塩辛がないから」
 それでというのだ。
「あとお茶もね」
「それもないわね」
「お湯があるけれど」
「それじゃあね」
「お茶漬けはないでしょ」
「工夫すれば出来ない?最悪お湯だけかけてね」
「それね、けれどね」
 姉は妹の言葉を受けて述べた。 
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