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とある3年4組の卑怯者

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79 活躍

 
前書き
 球技大会で頑張った3年生達を労わる為に花輪家で開催される打ち上げに行く事にした藤木。藤木は山根達とその打ち上げを楽しむ。そしてリリィはたまえと彼女の旧友・橿田ひろ子が再び仲直りする事ができて落ち着くのであった!! 

 
 花輪は笹山、城ヶ崎と共にいた。
「僕はsoccerの国、ブラジルもvolleyballで日本のrival、ソ連も行ったことあるけど、どちらも素晴らしい国だったよ。特にブラジルでは本場のsoccerの試合を見たこともあるのさ」
「へえ~、私も行ってみたいわねっ!」
「花輪クンは本当に本場のスポーツの事も知っているなんて凄いわ」
 その時、みぎわが鼻息を荒げてドスドスと足音を立てて三人の前に近づいた。
「ちょっと、私の花輪クンと仲良くしてんじゃないわよ!フンッ!」
「お、落ち着きたまえ、みぎわクン、城ヶ崎クンとは共に戦った仲じゃないか・・・」
 花輪はみぎわを抑えようとした。
「まあ~、花輪クンったらあ~」
 みぎわが顔を花輪に近づけた。そして、城ヶ崎と笹山を追い払った。
「アナタ達はあっち行きなさい!!花輪くう~ん、やっと私と二人きりになれたわね~、私と一緒に楽しみましょ~」
「み、みぎわクン・・・」
 みぎわの高圧的な態度により、城ヶ崎と笹山はその場を離れざるを得なかった。
「何よ、もうっ!ヒドいわねっ!」
「うん・・・」 
 その時、笹山は藤木が長山や本郷らと共にいるのが見えた。
「藤木君!」
 藤木は名前を呼ばれて振り向いた。
「笹山さん・・・」
「藤木君もよく頑張ったわね」
「いやあ、笹山さんも凄い活躍してたよ・・・」
 藤木は笹山に照れた。
「あ、君は1組の本郷君。1組って本当強いわね。女子は優勝したし、私達もバレーで1組に負けちゃったわ」
「ははは、ウチのクラスはスポーツ得意な人が多いからね・・・」
「それにしても本郷君は学級委員でサッカー部の練習も大変だし、辛いんじゃないの?」
「いいや、サッカーは好きだし、学級委員としても皆から頼りにされてるから学校生活は楽しんでる方だよ!」
「うわあ、凄いわね!」
 藤木は本郷と談笑する笹山を見て自分から離れていってしまうような気がしていた。
(もし笹山さんが本郷君の事好きになってしまったらどうしよう・・・?もし僕がリリィと笹山さんどっちか決める前にそうなったら、僕はリリィを選ぼうかな・・・。でもリリィは花輪クンが好きだし、もしかしたら・・・)
 藤木は最悪の結果を予想してしまった。その時、どこからか永沢が現れた。
「藤木君、君もしかして笹山が本郷君と楽しく話していて残念に思っているんだろ?」
「な、永沢君!?いや、そんな事ないさ!!」
 藤木は誤魔化して、テーブルに置いてある料理に手をつけた。その時、山田が騒ぎながらやってきた。
「うわあ~い、パーティーだ、パーティーだじょ~!!」
 山田が藤木とぶつかった。藤木が皿に載せて食べていた料理が床に散らばってしまった。
「あ、ごめんよ~!」
 山田が謝った。ケン太や長山、本郷や笹山らが藤木を心配して周りを取り囲んだ。
「藤木君、大丈夫!?」
 笹山が声をかけた。
「へ、平気さ・・・」
 藤木は球技大会で活躍して置きながらこんな散々な目に遭う己の運の悪さに嘆いた。

 リリィは別の料理を取りに行った後、鹿沼と出会った。
「あ、鹿沼君」
「リリィじゃないか。随分と活躍してたようだね。ウチのクラスが君のプレーを見て凄い女子だったって噂してたよ」
「あ、ありがとう・・・」
 リリィは少し照れた。
「僕ら男子も4組の男子には敵わなったね。連携を崩さずにしようとしていたんだけど、そっちのクラスの長谷川君や大野君に杉山君のプレーはとても凄かったよ。あ、そういえば小杉君が腹減ったとかいう理由で交代した時は少し笑ったよ」
「あ、そういえばそんな事あったかしら・・・」
 リリィは思い出した。確か永沢によると小杉は給食で沢山お代わりをしていたのだが、理由は試合中に空腹になって動けなくなってしまい、藤木と交代したとの事だった。
(藤木君も頑張ってたんだっけ・・・?)
 しかし、今藤木はリリィとは遠い場所にいた。
「あ、もしかして4組の子?」
「凄かったわね!」
 3組の女子達が集まって来た。リリィはチヤホヤされた。

 花輪家の使用人達が床に散らかった料理を片付けていた。
「山田君、少し落ち着けよ」
 山田は本郷に窘められた。
「アハハ、ごめん、ごめん」
 笹山は藤木が気になっていた。
「藤木君、気を取り直しましょうよ」
「うん、そうだね」
「そうだ、あのケーキ食べたら美味しかったわ。藤木君も食べようよ」
「うん、そうだね」
 藤木は笹山が美味しいと言ったケーキを取ろうとした。
「頂き!!」
 小杉が横から体当たりで藤木を突き飛ばし、ケーキをすべてかっさらってしまったのだった。
「ちょっと、小杉君、今の酷いわよ」
「知るかよ、早いもん勝ちだな!!」
 小杉は全く罪悪感を感じていなかった。
「藤木君、他の食べよう」
「そうだね・・・」
 一方、藤木はリリィにも自分の活躍を伝えようと思ったのだが、リリィは他の女子達と喋っているので近づく余裕がなかった。
(リリィとも話がしたいな・・・)
 笹山はそんな藤木の気落ちした顔を見ていた。
(藤木君、もしかして・・・)

 やがて、打ち上げが終了した。リリィは帰る事にした。
(色んな人と話せて楽しかったわ・・・)
 その時、リリィを呼ぶ声がした。
「リリィさん!」
 笹山だった。
「藤木君と一緒にいたんだけど、藤木君は何かリリィさんと喋れなくて寂しくしてたみたいなの」
「そうだったの?私も他の人と喋ってたから近寄れなかったわ」
「そっか、今日じゃなくてもいいから藤木君と話すといいんじゃなかしら?藤木君も喜ぶと思うわよ。それじゃあね」
「う、うん・・・」
 リリィは藤木が気になった。そして彼女は藤木を追って走り出すのだった。

 藤木は山根に永沢と共に花輪家を出た。
「はあ~、楽しもうと思ったのに・・・」
 藤木は溜め息をついた。
「藤木君、落ち込むなよ。あれは山田君が悪いんだから、君はケン太君や本郷君に凄いって褒められたんだから・・・」
 山根が励ました。
「う、うん、そうだけど・・・」
 藤木は結局、山田のせいで笹山に迷惑をかけてしまい、リリィに自分の活躍を話すどころか一度も話すことなく終わってしまった。その時、後ろから藤木を呼ぶ声が聞こえた。
「藤木君!」
 リリィだった。
「リリィ・・・」
「ごめんね、藤木君の活躍聞こうと思ったけど、たまちゃんの友達とか、3組の鹿沼君とかと話してて、なかなか近くに行けなくて・・・」
「いや、いいんだ。僕なんて・・・」
「でもさっき笹山さんとか長谷川君から藤木君の事聞いたわ。凄い頑張ってたのね・・・。優勝、おめでとう」
「リリィ・・・。ありがとう・・・」
 藤木はリリィにやっと自分の活躍を知ってもらえて嬉しかった。 
 

 
後書き
次回:「旅行」
 藤木はリリィから共に家族ぐるみで旅行に行かないかと誘われる。藤木の両親は旅行に金を出す余裕はないと躊躇うのだが、リリィの両親は・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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