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レーヴァティン

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第二百五十一話 蝦夷統一を前にその十

「他の本を読むことだ」
「それがよりためになりますね」
「自分にとってもな、読んで腹が立つまでに下らない本なぞだ」
 英雄はこうも言った。
「読んで無駄にストレスが溜まるだけだ」
「だからですね」
「俺はあのシリーズも吉本隆明の本もだ」
「読まないですね」
「他の本を読む」
 そうしているというのだ。
「金を払って買うなぞ金の無駄だし手に取ろうと手を動かす時間も駄」
「それすらもですね」
「無駄だ、世の中無駄なことなぞないと言うが」
「こうした本を読むことは」
「無駄だ、無駄なことがあるとすれば」
「そうした本を読むことですね」
「そうだ」
 こう言うのだった、そして政を離れると武道の稽古に励み書も読んだが控える小姓達が彼に言ってきた。
「上様、宜しいでしょうか」
「お聞きしたいことがあるのですが」
「何だ」
 座して立てさせた書の頁をめくりながら応えた。
「言ってみろ」
「はい、先程のお話ですが」
「読んでも無駄な書があると」
「上様は仰っていましたが」
「そうした書もあるのですね」
「言った通りだ、下らない書を書く天才もいれば」
 その空想何とやらシリーズの作者がまさにそれだというのは言うまでもない。
「何を言っているかわからない書を書く輩もいる」
「そうした輩の本は読むだけ無駄ですか」
「そうなのですね」
「色々書はありますが」
「世にはそうした書もあるのですね」
「真理は明快だ」
 英雄は言い切った。
「何を書いているのかわからない文章なぞだ」
「真理ではない」
「そうなのですね」
「そうだ、論語や孟子や韓非子を読むのだ」
 この世界にもあるこうした書をというのだ。
「わかりやすいな」
「はい、実に」
「読めば言いたいことがわかります」
「その書を書いた人の」
「そうだ、真理は常にだ」
 まさにというのだ。 
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