少女は 見えない糸だけをたよりに
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8-6
お盆明けの日、暁美さんは、彼氏のお休みに合わせてお休みだったので、私とすみれさんの二人だった。だけど、学生さんもお休みなので、午前中はお客さんも来なかった。お昼頃も数組しか来なかった。
「学校がお休みだとダメですね パンのほうはどうなんですか?」
「子供さんが、お休みじゃぁない だから、逆に売れ行きがいいのよ」
「そうなんですかー うちもキッチンカーとかで売る方がいいのかなー」
「そうねー 売れるかもね でも、店長のことだから、きっと、考えているわよ」
「そうですね あの人賢いから すみれさんは、いつからパン屋さんを?」
「私ね 短大に入った時にね 彼から、パンをいきなり、渡されてね 食べてみてくださいって・・初対面よ そして、2度目には、僕と一緒にパンを作って売ってくださいってね 突然よ 私もびっくりしたけど、彼もびっくりしたのよ 私が よろしくお願いしますって言ったもんだから 彼は、大学の近くでパンを売っていて、私を見かけて、ピンと来たんだって 私も、もらったパンを食べて こんな優しくておいしいパンを作る人って、きっと 心のやさしい人なんだろうなって思ってしまったからね だから、卒業して、すぐに一緒になったのよ 最初は売れ残ったパンばっかり食べていたけどね 親からも、借金してね でも、ようやく、去年ぐらいから、少し余裕できてきたのよ」
「すみれさん 見ていると 毎日が楽しそうで 幸せそう 旦那様が優しいんですよね きっと」
「うふっ それは どうだかね 香波ちゃんこそ 幸せそうよ 明るいし」
「はい 世界で一番 幸せかも だって 周りがみんな 良い人ばっかりなんだもの」
その後も、ポチポチしかお客さんが来なかったので、すみれさんは2時を過ぎて、居ても悪いからと帰ってしまった。夕方になって、くるみちゃんが来て
「ゲンイチさんね 真っ黒に日焼けして 元気だったわよ 香波に会えなくてさ残念がってたわよー」
「そう 私も会いたかったけどね」
「ウチなぁ そろそろ就活せんならんのやー」
「どんなとこに行くんですか?」
「そうね ホテルとか旅行社 希望」
「ふーん やっぱり お客さん相手なんだ」
「そうだねー やっぱり 楽しいからかなー」
「すごいねー くるみ がんばってね」
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