ハッピークローバー
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第二十三話 安売りだったのでその十五
「よくプラハとかパリが奇麗だって言うけれどな」
「それでもよね」
「大阪はないな、織田作さんもな」
その彼もというのだ。
「言ってなかったな」
「奇麗とは」
「そんな風にも書いてなかったな」
「そうだったの」
「大阪をありのまま書いてな」
そうしていてというのだ。
「そのざっくばらんで大衆的なところを書いていたんだ」
「それで奇麗とはなのね」
「本当に書いていなかったな」
「大阪は昔から奇麗さはなかったのね」
「太閤さんの頃からいないかもな」
その頃からというのだ。
「大阪をそう言った人は」
「お城出来た頃からなの」
「ああ、栄えていてもな」
それでもというのだ。
「奇麗とはな」
「言わないのね」
「実際昔の大阪の道なんてな」
ビールを飲みつつ笑って話した。
「物凄く汚かったからな」
「そうよね、そこでおじさんが寝てるのよね」
母も笑って話した。
「普通に」
「昔はそんなおじさん多かったな」
「大阪はね」
「最近減ったけれどな」
「天王寺とかにいたわね、私も見たけれど」
一華もそうしたおじさんについては心当たりがあるので話した。
「昔はもっと多かったの」
「ああ、もっとな。そこも大阪でな」
やはり笑って話す父だった。
「面白いところだな」
「おじさんが道で寝ていても普通ね」
「ああ、そうした飾らなくてな」
「ざっくばらんで」
「明るくて楽しくてな」
そうしてというのだ。
「人情のあるな」
「そこがいいのね」
「その大阪が好きでずっといられて幸せなら」
「大阪にいることね」
「それがいい、東京だけじゃないしな」
「暮らせる場所はね」
「むしろその街が好きならだ」
東京以外の街がそうであったならというのだ。
「そこで暮らせるとな」
「幸せよね」
「そうだ、そりゃ東京が好きな人もいる」
父はこのケースも話した。
「東京が肌に合ってな」
「それでよね」
「東京が好きな人もな」
「いるわよね」
「寅さんだってそうだしな」
男はつらいよのシリーズの主人公として知られている、渥美清が人情に溢れ女性に縁のないこの人物を好演していた。
「あの人だってあちこち旅して仕事していてもな」
「絶対に東京に帰ってたわね」
「葛飾にな」
「下町ね」
「東京のな、寅さんはあそこで産まれてな」
そうしてというのだ。
「育ってきたからな」
「あそこが好きで愛していて」
「だから絶対にだ」
仕事を終えるとだ。
「戻ってきてな」
「またお仕事に出るまで楽しんでるわね」
「そうしているな」
「だったらなのね」
「そうだ、その人それぞれだからな」
愛する場所はというのだ。
「そうした街で暮らして幸せならな」
「それでいいのね」
「幸せな場所で過ごせばいいんだ」
それでいいというのだ。
「いいな」
「ええ、わかったわ」
「じゃあ残り食べような」
「ホルモンもトマトもね」
「残さないでな」
「そうしましょう」
一華も笑顔で応えた、そうした話をしてだった。
一華は一家団欒の時を楽しんだ、その時はとても幸せなものだった。
第二十三話 完
2022・1・23
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