釣り上げた島
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第三章
「今度はそっちをどうにかするか」
「一体どうするんだ?」
「一日が速いといっても」
「それを長くするつもりみたいだが」
「どうやって長くするんだ」
「ちょっと太陽のところに行って来る」
明るく言って今度はだった。
マウイは太陽のところに行ってだ、太陽に怒って言った。
「お前遅く進め」
「それは何でだ」
「お前が速く進み過ぎて一日が短いんだ」
朝と昼がというのだ。
「夜ばかり長い、だからな」
「それでか」
「そうだ、これからは全力で走って進まずに」
空でそうせずにというのだ。
「のろのろと歩いてだ」
「そうしてか」
「進め」
こう言うのだった。
「いいな、お前もその方が楽だろ」
「ああ、実はな」
太陽はマウイにまさにと答えた。
「いつも夜になるとな」
「全力で走ってへとへとだったな」
「疲れて仕方なかった」
そうだったというのだ。
「まことに」
「それならだ」
マウイは太陽に今度は笑って話した。
「これからはな」
「落ち着いてか」
「ゆっくり歩いてな」
そのうえでというのだ。
「空を進めばいい、お前が空にいる間が一日の半分でだ」
「後の半分が夜だな」
「そうなる様にしてくれるか」
「その方がわしも楽だからだな」
「そうしてくれるか」
「わかった、そうしよう」
太陽も頷いた、そうしてだった。
実際に太陽は空を駆けることはしなくなりゆっくりと歩く様になった、そうすれば彼は一日の半分を空にいる様になる。
人はその間遊んだり仕事をしたり出来る様になった、そして後の半分で休む様になり実にバランスよくなった。
それでだ、人々はマウイに笑顔で話した。
「太陽のこともあんたのお陰だ」
「島や大陸を釣り上げて太陽もゆっくり進む様にしてくれた」
「あんたがそうしてくれてだ」
「世界は賑やかになって一日の半分を遊んで働ける様になった」
「よくやってくれたな」
「いやいや、まだまだだ」
マウイは自分を褒める人々に笑って返した。
「この世界はまだ足りない」
「だからか」
「それでか」
「まだやることがあるか」
「ああ、それを見付けたらな」
そうすればというのだ。
「またやるな」
「そうか、じゃあまた頼むぞ」
「世界の為に何かしてくれよ」
「宜しく頼むな」
人々は笑って話すマウイに笑顔で応えた、そして彼はそれからも世界とそこにいる人々の為に見付けたことを果たしていった。ポリネシアに伝わる古い話である、全ては一人の若者の活躍からはじまっているのである。
釣り上げた島 完
2021・12・12
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