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赤嶺巧 特別編 それから 本町絢と水島基は、 少女は 見えない糸だけをたよりに・・

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 那覇からフェリーで、ゆっくりと島に近づいている。この島に降り立つと、杉沢先輩から紹介された水島基さんが迎えに来てくれているはずだ。「君に 感じが似ているから 直ぐ わかるよ」と、杉沢先輩が言って居たけど・・

 港に寄せられて、船の上からでも、すぐに判った。たぶん、あの人だろう。真っ黒に日焼けして・・。

「初めまして 赤嶺巧です お世話になります」

「おぉー 水島です 遠いところ ご苦労様 銀世界からやろー 日本縦断やなー 健ちゃんから聞いている 将来の日本を考えている奴だから、勉強させてやってくれってな」

「はぁ 学校での勉強の前に いろいろと見ておきたくて 勉強させてください」

 真っ先に、魚の処理工場に案内されて

「ここは、漁師さんが7時前に持ちこんだのを10時までに処理をして、本島の加工工場に送るんだ。そして、その日のうちに加工する。骨とかガラはたい肥と太陽熱を利用して魚粉にするんだ。たい肥は島の畑に撒いているんだ。君にも、魚の処理とか、たい肥作りを手伝ってもらうよ。やっているうちに、ウチが抱えている問題がわかるようになる」

 そして、夕陽が美しい浜に軽トラに乗せてもらって、連れて行ってもらった。僕は、北海道で地平線に沈む夕日を見たけど、海に沈むのを見たのは初めてだったのかも知れない。

 その後、連れて行かれたのは、民宿だった。そして、中から出てきて迎えてくれたのは、おばぁさんで

「まぁ よう××× たなぁー」

 一瞬、日本じゃぁないのかと思った。山形よりももっとひどい。

「うふっ 気にするな 僕も まだ よくわからないんだから 適当に相槌をうっていれば、そのうち、通じるよ」

 早速、ビールを出してくれて、台所の横の部屋で飲んでいたら、奥さんらしい人が小さな子供を連れて帰ってきたみたいで

「いらっしゃい 殺風景な島でびっくりしたでしょ でも、北海道からでしょ キタキツネの居る」

「ええ でも、僕は見なかったですけど 牛しか」

「絢 どこにでも居るってわけじゃぁないと思うよ 赤嶺君 僕の妻 絢だ それと娘の実海」

「こんにちは よろしくお願いします お世話になりますが」

「ええ 杉沢君は私も小学校からの同級生よ 頭良かったわ 実海 ご挨拶できる?」

「こんにちわ あ・か・み・ね です 幾つかな」と、僕から挨拶したら

「しゃんしゃい みゅうみゅん でーす」と、髪の毛はザンギリ頭で真っ黒に日焼けしていて、手足も細く、男の子か女の子なのか解らなかった。その時、香波と初めてあった時のことを思い出していた。

「実海 2才でしょ」と、お母さんが

「ちがうよ もう しゃんしゃいになるもん」と、可愛い口をとがらせていた。

「まだなの 秋になったらね もうー あっ 直ぐに夕飯の支度するね」と、お母さんは台所に立って行った。綺麗な人だ。

「僕達は、大阪の出身なんだ。いろいろあって、この地に来たんだけどね。僕が、この海のサンゴを守るつもりで来た。絢は付いて来てくれたんだ。だけど、結局は、移植するぐらいしか手がない。温暖化の影響は止められない」

「あのー 僕が今まで、行ったとこは、あんまり、環境のことを考えているとは思えないところばっかりだったんですけど」

「そんなことはないよ 農業なり漁業をやっている人達は、みんな考えているはずだ。ただ、その方法が解らないんだよ。僕の場合は、まわりに恵まれていた。水産会社の社長さんがね、この島で取れた魚を殆ど買い取ってくれて、加工品にしてくれている。たい肥は島らっきょうの栽培に利用している。この島は漁業と観光で産業が成り立っているんだけど、あんまり観光に偏り過ぎると、自然が壊れて行く可能性があるからね。だから、僕は出来るだけ観光以外で地場産業を活性化させたいんだ。君もしばらく居るとこの綺麗な海と島の自然を残したいと感じるはずだよ」

 そのうち、お膳には晩御飯のものが並べられていった。そして、おばぁさんと奥さん、それに横のほうで絵を画いていた実海ちゃんも座って

「去年な、ここの敷地内に家を建てさせてもらって移ってきたんだよ。前借りていたところは、周りが雑草だらけでね、絢が変な虫がきて嫌がっていてな。洗濯ものも外に干せないって‥」

「だって 実海が平気で草むらの中にいっちゃうんだもの・・怖くて それに、おばぁちゃんとも一緒に暮らさなきゃね」

「みゅうみゅんは ばぁーちゃとじいーちゃ いっぱいいるんだよー」と、もう箸とスプーンを両方の手に持って使って器用に食べていた。

「うふふっ 私達 ふたりとも大阪の出身なのよ いろんな人にお世話になったからね 私ね 小学校の時に、この人を好きになっちゃってね それから、ずーと後ろを追いかけて、ここまで来ちゃったの」

「えっ そうなんですかー そーいえば、杉沢先輩も大阪だって言ってた 伝説の女を惚れさせて一緒になった男だからって」

「あいつ そんなことまで言ってるんかー」

「杉沢さんってさー 女っ気ないものねー 理想高いのかしら・・ 赤嶺さんって 彼女いるの?」

「絢 そんなこと ずけずけ聞くなよー」

「良いじゃあない 赤嶺さんって 基の大学生の頃の感じがそっくりだもの」

「僕は 付き合っている娘はいないですけど 決めている娘は居るんですけどね 今頃どこでどうしてるんだか」香波のことを思い出していた。今、どうしているんだろうかと

「それって なあにー 興味あるわね 何か事情ありそう」

「絢 もう 実海も聞いているし そのへんで・・」

「そうね じゃあ 実海 お風呂にしよ 今日は、こっちのお風呂ね おばあちゃんも、一緒にね」

「わぁーい」と、言いながら3人がお風呂に行って

「水島さん 良い家庭ですね 素敵な奥様です」

「そうだなー 絢は僕にとっては世界一だよ この島に来るときもな 働く場所もないから 自分でこの民宿で働いて、そのうち島の子供達に絵を教えている それで、この島の人気者になってしまったんだから 今、二人目がお腹に居る」

 その後、僕は4月初めまで、お世話になって、その間、魚の処理、農作業、シュノーケリングを体験させてもらった。この島は、数百人しかいないのだけど、みんなで島を守っている。今のところは、自然を壊さないように、そのため、水島さんは、頑張っているんだ。僕には、出来るだろうかと、思い知らされて、島を離れることになった。

「赤嶺さん 彼女と幸せつかんでね きっと 会えるわよ」と、絢さんが、最後に言ってくれていた。     
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