それでもお金は大事
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第二章
「お金も絶対じゃないのね」
「お前がそう言うか?」
交際相手で同棲している織蔵赤人は直美の言葉に少し驚いて言ってきた、やや面長で色黒で小さな目に厚く引き締まった唇を持っている。短い黒髪で筋肉質でラッパーを思わせる服装だ。
「お金が大事だと思っていたがな」
「いや、ジンバブエのお話聞いてね」
「あの滅茶苦茶になってる国か」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「考えてるのよ」
「そうなんだな」
「流石にそうはないと思うけれど」
それでもとだ、直美は家の中でパックの紅茶を飲みつつ言った、大きなポットに一個のパックを使ってそのパックで多くの紅茶を飲もうとしている。
「けれどね」
「まあ確かにあんな変な政治したらな」
「経済崩壊してね」
「ああなるな」
「有り得ないインフレになって」
それでというのだ。
「お金が紙屑になるのね」
「そうなることは事実だな」
「そうなのよね」
「それでその話を聞いてか」
「お金は絶対じゃないって思う様になったのよ」
「それはそうだな」
赤人もそれはその通りだと答えた。
「実際あんなことをしたらな」
「お金が紙屑になるわね」
「物々交換になる」
「経済滅茶苦茶ね」
「そうなる、けれど今の日本は違うだろ」
直美のその目を見て告げた。
「お金の価値は安定してるだろ」
「今はね」
「だったらな」
それならというのだ。
「今はそうしていいだろ」
「これまで通り節約して」
「貯金していったらいいだろ」
「そうなのね」
「かく言う俺もどうしてバイトしてるか」
実は同じ大学に通っている、だが彼はそちらにも精を出している。このことは直美にしても同じである。
「それはな」
「お金が必要で」
「それが価値があるからな」
「今の日本だと」
「だからそれでいいだろ」
「節約して貯金したらいいのね」
「ああ、少なくとも今はな」
今の日本ではというのだ。
「そうしてもいいだろっていうかな」
「そうすべき?」
「下手に遊んで借金作るよりずっといいだろ」
「借金って言葉大嫌いよ」
直美は実際その言葉を聞いた瞬間眉を曇らせた。
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