ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第89話 魔法じゃなくて魔王少女?四天王サニーの受難と禍の団の罠 後編
前書き
side;サニー
「死になさい!」
褐色女は魔力の弾を放ってくるが俺はフライ返しでそれを撥ねかえした。
「くそッ!何故効かない!?」
「へっ、さっきまでの光景をまるで見てないみたいだな。遠距離技は俺には効かないぜ、近寄ってきたらどうだ?」
「そうしたらあの馬鹿たちみたいに捕まるでしょう?絶対に近づかないわよ!」
俺は褐色女を挑発するが先程まで激高していた時は違って冷静にそう判断した。チッ、流石にあの馬鹿な奴らとは違うって訳か。
「とはいえこのままではいつまで立っても決着がつかないわね。なら今こそ刮目しなさい!これが私の得た新たな力よ!」
等々グルメ細胞の力を使うって訳か。さてどんな力かお手並み拝見といこうか。
「……」
だが褐色女は黙り込むと動かなくなった?なにしてるんだ、コイツ?
「……許せない。絶対に許せない……」
「あぁん?」
「ただ強い力を持っていただけで魔王になった奴らを許さない……私達を見捨てて偽りの魔王に付いた貴族どもが憎い……私達の苦労も知らずに能天気に生きている下級悪魔どもめ、苦しめ……純潔を穢す存在でしかない転生悪魔どもめ、死に絶えろ……神器などというゴミのような能力で私達に歯向かう人間め、大人しく家畜として生きればいいのに……ああ、憎いわ……」
「な、何をいってるの……?」
褐色女はぶつぶつと何か恨み言を呟き始めた。コスプレ女も動揺した姿を見せている。
「おいコスプレ女、あの褐色女は前からあんな性格なのか?」
「コ、コスプレって……私の名前はセラフォルーだよ!」
コスプレって呼ばれたことが気に食わなかったのかそんな感じで怒ってきた。
「ふーん、じゃあセラ。あいつは何をやってるんだ?」
「セ、セラ!?そんな呼ばれ方サーゼクス君にもされたことないのに……ど、どうしよう。なんだか胸が熱くなってきちゃった……!」
俺は面倒くさかったので略して名前を呼ぶがセラは何故か顔を赤くしてぶつぶつと呟き始めた。レヴィアタンって奴らはこういうおかしなことするのが普通なのか?
「何やってるんだ、お前?」
「え、えっと何でもないよ!……で、できれば君の名前も教えてほしいなーって思ったりして……」
「サニーだけど」
「へ、へぇ!いい名前だね!すっごく似合ってる……うん、カッコいいよ……」
「そりゃどうも。それよりもさっさと質問に答えてほしいんだけど?」
「カ、カトレアちゃんは嫉妬しやすい子だけどあんなにブツブツ言ったりしなかったと思う。まあ態度が酷すぎて周りから嫌われてたのは変わってないけど……」
「ほーん……ってなんかアイツ燃えてねえか?」
少し褐色女から目を離していたら、いつの間にか褐色女の体に火が付いていた。
「カトレアちゃん!?まさか自害する気!?早く助けないと!」
「いや、ありゃ自分の体から火が出てやがる……!」
「憎い…全てが憎い……!!」
褐色女はそう言うと全身に燃え上がっていた炎が黒く染まりまるでドレスのように黒い炎を纏っていく。
「これが私の目覚めた力、名付けて『妖艶なる嫉妬の炎』よ!」
「嫉妬?妬んで力を出すって訳か?妖艶って付いているが美しくねえな」
「気を付けて、サニー君!嫉妬はレヴィアタンが司るもの、それを力に変えたって事はあの炎は唯の能力じゃないよ!」
「見りゃ分かるよ、触れたらヤバそうだ」
俺も馬鹿じゃない、本能があの炎はヤバいと警告をしている。ヘアロックはしない方が良いな。
俺は近くにあった公園の遊具を触手で持ち上げると褐色女目掛けて投げつけた。だが褐色女は黒い炎を鞭のように形作ると遊具に巻き付けた。
「私の炎は自在に形を成すことが出来る!さあ、返すわよ!」
褐色女は勢いよく鞭を振って遊具を投げ返してきた。俺は後ろを見てセラや子供達に遊具が当たらないようにヘアネットで遊具を受け止める。
「丸焼けになりなさい!」
褐色女は炎を槍のような形にしていくつも放ってきた。
「はっ、ノロすぎて当たんねえよ」
俺はフライ返しをしないで炎の槍をかわしていく。そのうちの一本が近くに倒れていた褐色女の部下に刺さった。
「ぎゃあっ!?熱い!!」
男の肩に刺さった炎の槍は男の肩を見る見るうちに焼き焦がしていく。男は魔法で水を出して炎を消そうとするが、黒い炎は全く消えずに燃え続けていた。
「ひィ!?なんで消えないんだ!?」
「ちぃ、邪魔な部下ね。私の嫉妬から生まれた炎は私の意志がある限り燃え続けるのよ」
「カトレア様!助けてください!」
「駄目よ、役に立たなかった罰としてそのまま火だるまになりなさい」
「そ、そんな……ぎゃああああっ!?」
男は褐色女に助けを求めたが聞き入れてもらえずに炎が燃え広がって火だるまになった。敵だとはいえあんなのが上司なんて同情するぜ。
だがやはり触れないで正解だったな、あの炎。もしフライ返しをしていたら触覚に炎が燃え移っていたからな。
「さあ、今度はお前の番だ!」
褐色女は槍ではなく矢の形に変えた黒い炎を連発してはなってきた。速度はあるがイッセーのフライング系の攻撃と比べれば全然遅ぇな。
(しかし厄介だな、あの黒い炎。あの女自体はそこまで強くないが触れたら燃え続けるってのが嫌だ。大事な髪が痛んじまうじゃねえか)
そう、俺にとってこの美しい髪が燃えてしまうなど想像も絶する苦痛だ。実力で言えば直ぐに片を付けられそうなのだがあの炎に触れれないのが中々責められない理由になる。
イッセーなら釘パンチで無理やりぶっ飛ばせるだろう、ココも毒で遠距離攻撃が出来る。だが俺は触手がメインの為決定打にかけるという訳だ。
ボンヤリとそんな事を考えていると褐色女は当てられずにイラついていた。どうやら最初は冷静になっていたがキレると直に熱くなる性格みたいだな。
「この!避けるな!」
「当てれねぇお前が悪いんじゃね?」
「ぐっ……なら特大のをくれてやるわ!」
ムキになった褐色女は頭上に大きな黒い炎の塊を生み出して俺にぶつけてこようとする。俺は公園に生えていた数本の木を触手で引っこ抜いて炎の塊にぶつけた。
すると炎は大きくはじけて互いの視界を遮る程の爆発を生み出した。そしてそれをチャンスと見た俺は公園にあったなんか丸い穴ぼこの空いた遊具を爆風に向かって投げる。
「なんだ!?」
「10万本髪パンチ!!」
そしてその遊具を盾に使い褐色女を髪パンチで殴り飛ばした。本当は20万本でいきたかったが距離があったため断念した。
「ガハッ!?」
遊具越しとはいえ髪パンチをまともに喰らった褐色女はそのまま地面に倒れた。一応地面に当たる前に黒い炎を使ってクッションにしていたがダメージは大きいのか動けないようだ。
「よし、このまま一気にトドメを刺してやるぜ!」
「動くな」
だがその時だった。背後から何か声が聞こえたかと思うとセラが黒いフードを被った何者かに押さえつけられていた。何か槍みたいなものを持ってるが何か神聖なものを感じるな。
「サ、サニ―君……ごめん……」
「セラ!?……てめぇは一体何者だ?」
俺は当然戦えないセラや子供たちのフォローもしていた。だが俺の触手に一切触れることなくしかも気配も察しさせずにセラを無力化した……間違いなく只者じゃねぇ!
「た、助かったわ……よくやったと褒めてあげる」
「下らないプライドだな。俺が助けてなかったらやられてた癖にどうしてそんな態度が取れるのか理解に苦しむよ」
「黙れ!お前みたいな人間は私に使われていればいいのよ!」
どうやら褐色女の助太刀みたいだが仲は良くなさそうだな。というかあのフードの奴は男か、声がそんな感じだ。
「ごめんね、サニー君。こいつが持っている槍は神滅具……『黄昏の聖槍』は悪魔にとって最大の天敵なの……」
「イッセーと同じ……じゃあお前がグルメ細胞を!?」
俺は本能的にコイツがグルメ細胞に関わっていることを察した。
「グルメ細胞……なるほど、君は四天王の一人サニーだね。その強さ、想像以上だよ」
「俺を知ってるって事はやはりビンゴか?」
「残念ながら俺はグルメ細胞を与えてもらっただけさ。でもその人物のボディガードはしてるよ」
「つまりお前をとっつかまえれば一気に問題解決まで近づくわけだな?」
「ははっ、意外と好戦的なんだね。俺も君と戦ってみたいけど今の任務はその女のフォローなんだよ」
すると背後から黒い炎の鞭が飛んできたため俺はジャンプして回避する。どうやら褐色女がダメージから回復しちまったみたいだな。
「避けるな!」
「馬鹿じゃねーの、戦いの最中に油断なんかするかよ。まずはお前から……」
「動くなと言ったよね。次に動いたらこの槍を彼女に突き刺すよ」
「ぐっ……」
俺は褐色女にトドメを刺そうとするがフードの男がセラに槍を突きつけたため動きを止める。
「人質とは卑怯な手を使うじゃねえか、美しくねえな」
「ふふっ、まあ厳しい自然界で人質なんて戦法はされないだろうしね。でも俺は弱っちい人間だから汚い手も使わせてもらうよ」
「その言い方だとG×Gに行ったことがあるのか?」
「ああ、勿論だ」
ただグルメ細胞を貰っただけでなく実際にG×Gにも行ったことがあるのか、コイツ。こりゃ黒幕とは深いつながりがあるな、なんとしてもコイツを捕まえねえといけねぇな。
「私を無視するな!」
だがそこに褐色女の炎の鞭が俺に当たり胸を焼いていく。しかも炎が傷口にとどまりいたぶるように焼いていく。
はっ、こんなモンなんとも……ぐっ!?……ねえんだよ!!
「ぐぅ……!」
「あはは!どう、私の炎の味は?傷口をいたぶるように焼いていくのが良い感じでしょう?」
「さ、最悪の気分だな……料理人だったら鼻で笑われるいい加減な火加減だ、まったく調和出来てねぇ」
「相も変わらず減らず口を……ならお前を料理してやるわ!」
褐色女は攻撃を避けられなくなった俺に嬉しそうに鞭を振るってくる。肩や足を焼かれていくが俺は苦痛の表情は浮かべないように我慢していた。
「あッはッは!無様ね!所詮人間など私達の敵ではないのよ!」
「はっ、その人間に人質を取ってもらえないと攻撃も満足に当てられない奴が何を言ってるんだ?血しか誇れる部分が無いからセラに負けたんじゃねえの?」
「黙れ!」
褐色女は炎を剣のような形にして俺の胴体を斜め一閃に切り裂いた。そして傷口に剣を突き刺してグリグリと抉ってくる。
「がぁぁ……ッ!!」
「もっと苦しみなさい!真なる魔王である私を侮辱したことを後悔しながらね!」
「もうやめて!」
更に俺に攻撃をしようとした褐色女をセラが止めた。
「セラフォルー、今いい所なのよ?なにもできないクズが口を挟まないで頂戴」
「お願い、もう止めて……やるなら代わりに私をやってよ。サニ―君は関係ないでしょ?」
「いいえ、止めないわ。このグズは私を愚弄した、その罪は万死に値するわ」
褐色女は尚も炎の剣を傷に差していたぶってくる。だが俺は褐色女を無視してセラに声をかけた。
「セラ、余計な事すんな!お前が代わりにこんな奴らになぶられる必要なんてねぇ!」
「どうして……どうしてサニー君はそこまで私の事を……」
「勘違いすんな、俺は別にお前のためにやってるんじゃねえ。だがな、こんなクズどもが無抵抗の女を痛めつけるなんて美しくねえモンは見たくねえだけだ……!」
「サニ―君……!」
俺はこういう風になにもできない奴をいたぶるようなクズが嫌いだ、美しくねえからな。だが赤の他人とはいえ別の人間がいたぶられるのを見るのはもっと嫌いだ。
なら俺がいたぶられた方がまだマシってもんだ……!
「……ふぅん、なるほど。そういうことね」
褐色女は一旦俺への攻撃を辞めるとセラの方に視線を向ける。何故かニヤついていたがムカつくぜ。
「貴方、こんな奴がタイプなの?趣味が悪いわね」
「そ、それは……」
あん?どういうことだ?コイツらは何を言ってやがる?」
「いいわ。セラフォルー。もし貴方が私に絶対の忠誠を誓うというのなら考えてあげても良いわ」
「……分かった。誓うよ」
セラがそう言うと褐色女はイヤな笑みを浮かべてセラに近寄っていった。俺はその隙に倒れていた褐色女の部下達を触手でまさぐっていく。
「おい、早くあの男にトドメを刺した方が良いんじゃないか?」
「黙っていなさい、今私は最高に気分が良いの。邪魔をするなら殺すわよ」
「どうなっても知らないよ……」
フードの男は呆れたようにそう言って少し下がった。そして褐色女は倒れているセラの前に立つを彼女を蔑むように見下す。
「無様ね、セラフォルー。ようやく貴方のその姿が見れて凄く嬉しいわ」
「うぅ……」
「あの男を助けてほしいのなら土下座をして『私はカトレア様に絶対の忠誠を誓います』と言いなさい。その姿を魔法で記録して冥界に……いえ世界中に流してやるわ」
「……はい」
セラはそう言うと土下座をした。そして褐色女の言ったセリフを言い始めた。
「わ、私はカトレア様に絶対の……」
「言わせるかよ」
俺は褐色女を触手で縛りつけた。フードの男は逃がしちまったがまあいい。
「な、なに!?」
「サニー君!?」
「おらぁっ!!」
そして触手を振るい褐色女を公園にあった噴水に叩きつけた。だが褐色女の体から出ていた黒い炎が触手に燃え移りジリジリと焼き焦がしていく。
「がぁぁぁっ……!?」
俺にとって触手はとても繊細な場所だ、触手が傷ついたり千切れたりすれば凄まじい痛みに襲われる。
例えるなら麻酔無しで歯を引っこ抜かれるような痛みだ、しかも燃やされているので更にむき出しになった歯茎を火で直接あぶられるような痛みも追加されている。
だが俺は必至で歯を食いしばり苦痛の表情を浮かべないようにする。そんなの美しくねえからな。
「おいセラ、お前魔王じゃねぇのかよ?なんで俺を助けようとするんだ?」
「そんなの決まってるよ、だって私は魔法少女だもん!」
「だから俺を助けると?ぜんぜん魔王らしくねえな」
「それでも私がそうしたいからいいの!魔王らしいとかそんなの面白くないよ!」
「……はっ、そうだな。自分を貫こうとするその姿、それも美しさだな」
「えっ……?」
「お前は美しいよ、セラ」
「サ、サニー君……」
俺は魔王っていうのは卑怯で狡猾で最悪なモノを想像していた。あの褐色女の方が魔王という意味では実にお似合いだ。
だが魔王であっても自分のやり方を変えずに時には決して軽くない頭すら下げようとするその姿を俺は美しく感じてそう呟いた。
ただセラの顔がめっちゃ赤くなってなんか目も潤んでいるがどうしたんだ?俺そんなにおかしなことを言ったっけな?
「このクソ野郎がぁぁぁぁぁっ!!!」
「あっ、忘れてた」
噴水からビショビショになった褐色女が出てきた。でも炎は消えてないな、マジ面倒くせぇ。
「折角命を助けてやろうかと思ったのに自分からそのチャンスを潰すなんて人間は本当に救いようのない愚か者ね!」
「よく言うぜ。子供を平然と殺そうとしたゲスの言う事なんか鵜呑みにするかよ」
大方最後に俺や気絶した子供達をセラの目の前で殺すに決まってる。こういう三流のゲスは決まってそうするからな。
「どの道お前には勝ち目は無いのよ!魔法も使えない役立たずを助けたことを後悔して死に絶えなさい!」
「それはどうかな」
俺は紫に輝く玉をセラに渡した。
「そ、それは……!?」
「この空間だと魔法は使えないルールなんだろ?お前らだけ使えるって事は大方何らかの抜け道があるって事だ。んで倒れていたお前の部下を探ってみたら簡単に見つかったわけ。この玉がその抜け道なんだろ?」
「ま、魔力が溢れてくる!これなら魔法が使えるよ!」
どうやら俺の考えは正しかったみたいだな、セラから凄まじいオーラを感じるぜ。正直本当にコイツ魔王か?って思ってたけどこのオーラを直に感じれば納得だ。
「こうなったら全てを焼き尽くしてやる!!」
褐色女はヤケクソになったのか辺り構わず黒い炎をまき散らし始めた。その一部が子供達に当たりそうになり俺はそれを防ごうとする。
「させないよ」
だが一瞬の内にぶ厚い氷の壁が生まれて子供たちを守った。これがセラの魔法か、すげぇな。
「この!偽りの魔王の癖に……!」
「確かに私は先代レヴィアタンとは何の繋がりもないよ。でもふざけてその名を貰った訳じゃない!魔王として同族の……親友の暴走は私が止める!」
「偽物の癖に魔王を語るなぁ!!」
黒い炎と蒼い氷が激突してした。辺りは黒と蒼に染まりこんな時に言うのもなんだが幻想的な空間を生み出していた。めっちゃ美しい……
「ぐぅ……!!」
「ハッハッハ!威勢のいい割には大したことがないわね!」
だがセラは褐色女の消えない黒い炎に徐々に押され始めた。しょうがねえ、手を貸してやるか。
「フライ返し!」
俺はセラの氷ごと黒い炎を撥ねかえした。触れさえしなければ問題は無いからな。
「サニ―君!?」
「さっさとこんな奴倒して帰るぞ。そろそろ腹が減ってきたからな」
「うん!」
俺はセラと協力して黒い炎を撥ねかえしていく。褐色女は必至で黒い炎を生み出すがセラの氷に押しつぶされて身動きが取れなくなっていった。
「そ、そんな……!私は究極の力を手に入れたのに!どうして!?偽りの魔王を倒して真なる魔王になるはずが……!!どうしてなのぉ!!」
「知るか。いい加減そのセリフも聞き飽きた」
俺は20万本の触手を束ねて髪の巨人を生み出した。そこにセラの氷の魔力が宿り蒼く染まっていく。
「喰らえ!20万本アイスドライ髪パンチ!!」
「ひっ……!?」
そして全力の一撃を褐色女……には直接当てずにスレスレで掠めて地面に大穴を開けた。殴った衝撃で吹雪のような風圧が巻き起こり褐色女を吹っ飛ばした。
褐色女はあまりにも恐ろしかったのか口から泡を吹いて気を失っていた。
「う~ん、吹っ飛ぶ姿はそこそこ美しかったよ」
俺は肩の誇りを手で払いながら褐色女の吹っ飛び具合を採点した。もうちょっと綺麗なポーズで倒れて欲しかったな。
「サニー君!」
「うおっ!?」
するとセラがなぜが抱き着いてきた。
「止めろ、重いんだよ!離れろって!」
「えへへー!やったね!」
俺はセラを引っ張り剥がそうとするが全然離れねえ。こんなことしている場合じゃないんだけど。
「うん?」
「あれ?元の世界に戻ってる?」
一瞬で元の世界に戻ってきた俺とセラ、辺りを見渡すと子供たちはいるが褐色女やフードを被った男は消えていた。
「あいつら、いなくなってやがる」
「多分絶霧の所有者がやったんだと思う。私達を現実の世界に戻したのはカトレアちゃんを回収されるのを邪魔されたくなかったからじゃないのかな?」
「あの槍を持ったフードの男がいたのにか?正直こんなこと言いたくねえがアイツがマジできていたらもっと面倒だったぜ」
「そうだね、途中からなんにもしなくなっちゃったし何が目的だったんだろう?」
「まあ済んだことはもういいだろう。それよりも離れろって」
「あっ……」
俺はセラを引きはがすと彼女は何故か悲しそうな顔をした。なんだってんだよ……
「まあいい、それよりも子供達をどうするかだが……」
「あっ、それなら大丈夫だよ。サーゼクスちゃんに連絡して保護してもらうから。記憶もいじれるから親も問題にはしないよ」
「そうか、なら後は頼むわ」
俺はそう言ってその場を立ち去ろうとするがセラに捕まってしまった。
「なんだよ?」
「あ、あのね……ありがとう」
「なにが?」
「私を守ってくれた事だよ。あんな風に男の人に守ってもらった事なんてなかったし嬉しかった。それに美しいって言ってくれた、今まで男の人に一杯そんな言葉をかけてこられたのにサニー君に言われたらすっごくキュンってしちゃったんだ……」
「そうか、そりゃ良かったな」
俺は面倒くさくなってさっさと話を切り上げようとする。だがセラは一向に手を離してくれなかった。
「おい、いい加減に手を離せよ」
「サニー君、私ね……」
「あん?」
「私!サニー君の事が大好きだよ!!」
「はっ……」
俺は言葉を発しようとしたが出来なかった。何故ならグイッと引き寄せられたかと思えばセラの顔面が目を覆いつくしたからだ。
しかも口には何やら柔らかな感触がした。それから数秒は固まったままになっていたがセラが離れた事で解放された。だが俺の頭の中は滅茶苦茶になっていた。
「えっ……はっ……えっ……?」
「えへへ、ファ―ストキスだよ……♡」
セラは顔を赤くしながらそう呟いた。俺はそれを見て……逃げた。
「ええっ!?なんでぇ!?」
「お前もう無理!これ以上無理!!」
「ま、待ってよー!」
「ついてくんなー!!」
俺はもうなんかぐちゃぐちゃになって唯々逃げた。もう訳わかんねぇよ!!
―――――――――
――――――
―――
side:小猫
「……とまあこれが俺とセラが出会った話だな」
な、何というべきか……無理やり言葉を出すなら凄いとしか言えません。あのサニーさんがカッコよかったりセラフォルー様が乙女していたりとにかく凄いです。
「えへへ、私とサニー君の愛の物語はどうだったかな?」
「愛とかねーから」
「もう!素直じゃないな!」
「うっせぇ!」
宙に触手でぶら下げられているセラフォルー様に対してサニーさんは忌々しそうに言いました。
「何が不満なんだ?こんな美人とキスできたんだぞ?」
「じゃあゼノは男にいきなりキスされたら嬉しいのかよ?」
「それは……」
ゼノヴィアさんはサニーさんにそう言われるとイッセー先輩を見て顔を赤くしました。ライフでのキスを思い出したんですね。
「けっ、イッセーもよくやるもんだぜ!だがな、俺はそんなお気楽じゃねぇんだよ!好きでもねぇ女にキスされて嬉しい訳がねぇだろうが」
「そもそもサニーさんは結婚したいっていう欲とか願望ってあるんですか?」
「ねぇよ、そもそも俺に釣り合う美しい女なんていないし自分にしか興味ねーし」
祐斗先輩に結婚願望はあるのかと聞かれたサニーさんは自分にしか興味が無いと言いました。
「はいはーい!サニー君にぴったりの女の子がここにいるよー!」
「うるせぇ!もうツッコムのもウンザリなんだよ!」
「そんな突っ込むだなんて……♡サニー君ったら気が早いよ♡でもどうしてもっていうなら私も覚悟を決めるよ……♡優しくしてね……♡」
「……」
セラフォルー様がそう言うとサニーさんは本気で嫌そうに黙って髪を指でかきむしりました。髪を大事にしているサニーさんが自分であんなことをするとは……
「そもそもセラフォルー様、お兄様には詳しく話をされたのですか?」
「まだだよ、襲われたから子供達の回収お願いねーってライン送っただけだよ」
「通りでお兄様から電話が鬼のように来ている訳だわ……」
どうやらセラフォルー様はサーゼクス様に詳しく話をしていないようですね。リアス部長の携帯がさっきから鳴っていますし。
すると魔法陣が現れてなんとソーナ会長が姿を現しました。匙先輩も一緒ですね。
「お姉さま!一体何をしているんですか!」
「ソーナちゃん?どうしてここに?」
「リアスから連絡を受けて急遽ここに来たんですよ!まさか兵藤君に迷惑をかけていたなんて……兵藤君、姉に変わって謝罪させてください。本当にごめんなさい!」
「いや、俺は大して迷惑をかけられたわけではないですし……」
「おい!俺はめっちゃ迷惑かけられてんだけど!?」
どうやらリアス部長から連絡を受けたソーナ会長が直接迎えに来たようですね。
会長はイッセー先輩に謝罪しましたが先輩は気にしなくていいと返しました。でもサニーさんはウガーッと怒りました。
「さあ帰りますよ、お姉さま!サーゼクス様が詳しく話を聞きたいとのことですので!」
「えー!待ってよ!サニー君と離れたくないよー!」
「さっさと行け」
ソーナ会長はセラフォルー様を連れて行こうとしてセラフォルー様はサニーさんに手を伸ばします。でもサニーさんはシッシッと手をはらいました。
「それでは失礼します。兵藤君、今度改めて謝罪させてもらいますね」
「兄貴、じゃましたな。また会談で会おうな」
「サニーくーん!!」
三人はそう言うと魔法陣に乗って帰っていきました。
「イッセー、俺は帰るぞ。もうこっちには来んからな」
「お、おう……お疲れ」
サニーさんはそう言うと心底疲れた様子を見せてG×Gに帰っていきました。
「しかしまさかサニーが例の黒幕に近い奴と出会うとはな、それもイッセーと同じ神滅具使いが二人もじゃ。こりゃ一筋生ではいかんぞ」
「親父、いたのか?」
「そりゃいるわい。まあ気配は消しておったがな」
そういえば一龍さん達の姿が見えませんでしたが地下に行っていたんですね。
「間違いなくその禍の団にそやつは接触しておる。何とかしてそいつらと出会えれば手っ取り早いんじゃがな」
「でも魔王の一人が襲撃を受けたんだ。もしかしたら会談も中止になるかもしれないな」
「まあこちらはまだ表立っては動けん。相手の出方を伺うしかないな」
確かにイッセー先輩の言う通り魔王様が襲撃を受けたので会談が中止になる可能性もあります。
この先一体どうなっていくのでしょうか……?
後書き
ゼノヴィアだ。サニー殿はやはり強いな、私もいつかイッセーや彼のような本当の強さを見に付けたいものだ。
さて次回は会談に入るらしい、結局中止はしなかったみたいだな。そして話が進んでいくのだがそこに再び禍の団の魔の手が伸びてきてとんでもない事になってしまった。
どんな風にとんでもないのかって?それは次回の楽しみと言う事でここでは言わないぞ。
次回第90話『三大勢力会談始まります!遂に出会う、D×DとG×G』で会おう。次回も美味しくいただきます!……これでいいのか?
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