少女は 見えない糸だけをたよりに
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最近は、燿さんは、朝なり夜なり不定期にお店に出るようになっていた。ひさしぶりに、燿さんとお風呂に入った時、聞いてみた。
「燿さん この頃 夜のお仕事 無いんですか?」
「そうね 香波に言ってなかったんだけど、辞めたの 今は 帯屋で研修 お父様と約束したの 帯屋を継ぐ代わりに、私の決めた人と結婚しても良いって だって、この前から、お見合いしろってうるさいから・・」
「燿さんって 好きな人 いるんですか?」
「うふっ それがねー 残念ながら・・居ないの 香波みたいに 王子様居るといいんだけどね それよりね そろそろ お店 離れた時は、お姉ちゃんて呼んでよ 妹なんだから」
「はぁ なんか 呼びづらいなー」
「あのさー 香波も 色んな人とを知り合うことは、悪くないと思うよ だって、香波は、人との関わり経験少ないじゃぁ無い もっと、出ていきなさいよ 自分をしっかりと見失うことなければ大丈夫よ」
翌日、私は、恐る恐る公衆電話から・・
「あのー ゲンさんですか 香波です」
「香波ちゃんなのか いゃー 待ってたんだよ もう 駄目なんかと思ってました」
「あのね ごめんなさい 電話するのって 恐くて・・」
「あー すまない くるみさんも 居たんで、あまり話せなくって そのー 自分は そのー 香波ちゃんが喜ぶようなとこも知らなくって 連れていくようなとこも知らなくって・・」
「あのね ゲンさん 私 そんな特別なとこでなくていいの 鴨川の河原でゲンさんと、つまんないお話出来ればいいのよ だから・・ でもね、水曜の午後しか時間無いの」
「あー 勿論です 行きます 大丈夫です うれしいっす」
そして、水曜日、パソコン教室を終えて、待ち合わせの二条大橋で、ゲンさんと会った。それから、鴨川沿いをゆっくりと歩いて出町柳のデルタのところまで。
なんか、ぎこちなくって、私は手も繋げなくって・・でも、会う前にコロッケサンドのパンを買っていたので、座って食べて
「香波ちやん ありがとう 気がつくね やっぱり」と、ゲンさんは二口ぐらいで食べてしまって。
「ごめんなさい 二つぐらい 買って来ればよかったね」
「いや そんなことないです ありがたかったすよ」
「ねぇ 就職活動はどうなんですか」と、聞いてみたら
「うん 親父が身体弱ってるんで、帰ってきてくれってんで、実家に帰って、漁師と民宿の親父を継ぐことにした あはっはー」
「わぁー 素敵ですね 漁師のゲンさんて 見てみたいな―」
「そっ そうですか 一緒にいきませんか あっ いや そうなったら 一度 来てください」
「えぇ ぜひとも 行きたい 私 海が好きだから」
「うん 来たらね 近くの海岸とかね 案内するよ きれいなんだよ 岩場で小さいカニとか採れるんだ」
「うわー いいなぁー ねぇ 私 お兄ちゃん 居ないんだけど もし、居たら・・ゲンさんって 私のお兄ちゃんみたいね」
「そうかー お兄ちゃんかー でも、いいっか こうやって 香波ちやんとゆっくりできるんだから」
「うん ゲンさんと居ると安心できる」
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