飼う方が
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第一章
飼う方が
武威剛造は白髪を真ん中で分けて面長の穏やかな顔立ちの老人である、定年退職してからは妻の明菜白い頭を短くし優しい顔をした垂れ目の彼女と二人で穏やかに暮らし。
近所の団地にいる野良猫達に餌をあげるのを日課にしていた、猫達は七匹いてだった。
「白い二匹は雌でリン、チンっていうんだ」
「そうなの」
猫達にご飯をあげつつ一緒にいる妻に話した。
「それで白地で茶の子達は雄でね」
「そっちの子達はそうなのね」
「ノブとトヨっていうんだ」
「名前もつけてあげてるのね」
「そうだよ、黒猫達にもね」
見ればそちらも二匹いる。
「雄の子はガウ、雌はミナっていうんだ」
「じゃあそっちの黒と白で八割れの耳の大きな子は?」
妻は夫に最後の一匹を見つつ尋ねた。
「何ていう名前なのかしら」
「この子は雄でハチだよ、皆僕に懐いてくれて」
「ご飯をあげてもなのね」
「お水もね、穏やかに過ごしてくれてるよ」
「そうなのね」
「うん、ずっとこうして一緒にいたいよ」
団地に来てご飯をあげてとだ、長年寄り添っている妻に微笑んで話した。
だがそのことをもう嫁いでいる二人の三人の娘達が法事で実家に帰ってきた時に話すと。
まずは長女の紗友里、黒髪を長く伸ばし大きな吊り目でスタイルのいい長身の彼女が最初に父に言った。顔立ちは武威の母親似である。
「それよくないわ」
「そうよね」
次に次女の真由里、黒髪を短くし垂れ目で母親に似たやはりスタイルのいい長身の彼女が頷いてから言った。
「ご飯をあげるだけじゃね」
「それじゃあ何にもなってないわ」
最後に三女の吉利里、肩を覆う位の黒髪で母方の祖母に似たきりっとした目で長身でスタイルは三姉妹で一番いい彼女が言った。
「野良のままだからね」
「あの、ご飯をやるだけじゃなくてね」
長女は父にあらためて言った。
「去勢や不妊をして地域猫にしたり」
「そうしたことをかい?」
「しないと」
「一番いいのは飼うことよ」
次女はこう言った。
「そうしたらお父さん達もずっと一緒にいられるし」
「七匹いるなら流石に皆面倒見られないけれど」
三女は数のっことから話した。
「何なら私達も引き取るわよ」
「二匹ずつがいいわね」
「そうね、私達旦那も子供の含めて皆猫大好きだし」
「丁度飼いたいって思ってたしね」
「猫アレルギーとか気になるけれど」
「まずは保護しよう」
姉達も言った。
「それじゃあね」
「まずはその子達保護してね」
そうしてとだ、長女と次女は話した。
「それでね」
「それぞれ家族に迎えましょう」
「それがいいか、じゃあ七匹共な」
「ええ、まずは保護しましょう」
夫婦も娘達の言葉に頷いた、そして三人に言われる通りにだ。
ボランティアの保護団体に協力してもらって団地の猫達をまずは保護した、六匹はすぐに保護出来たが。
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