イベリス
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第五十二話 夏になる前にその五
「大好きよ」
「だったら大事にするわね」
「当然よ、長生きしてもらって」
そうしてというのだ、咲は今もモコを見ている。そのうえで母にも父にも彼女のことを話すのだった。
「それでね」
「何時までも元気によね」
「いて欲しいわ」
「そう思うならね」
それならというのだ。
「大事にしなさいね」
「そうしていくわ」
「お互いに大事にし合ってね」
そうしてこそというのだ。
「家族になるのよ」
「それが家族ね」
「お互いに大事にし合ってね」
「ただ血のつながりじゃないのね」
「モコ犬じゃない」
「種族に関係なくよね」
「そうよ、若し子供が出来たから飼ってる犬捨てる家族だったら」
そんな家ならというのだ。
「あんた結婚したら駄目よ」
「どうしてなの?」
「命をそんな粗末にする人なんて誰も大事にしないわよ」
それこそとだ、母は話した。
「あんたが跡継ぎ産んだらポイで産まなかったらね」
「何時産むんだとか?」
「言ってね」
そうしてというのだ。
「いじめてくるわよ」
「そんなお家だから」
「そう、だからね」
そうしたことがわかるからだというのだ。
「そうしたお家にはね」
「入らないことね」
「結婚しないことよ」
「相手の人が好きでも」
「そうして育ったお家の人は二種類あるのよ」
母は咲に真剣な顔で述べた。
「そうしたお家が嫌で離れてるか」
「べったりか」
「そしてべったりの人とはね」
「結婚しないことね」
「結婚するまでどれだけいい顔しても」
それでもというのだ。
「それからはね」
「地が出るのね」
「そう、結婚したらずっと一緒にいるのよ」
母はそうなることも話した。
「だからね」
「色々な面が見えるのね」
「いいところも悪いところもね」
その両方がというのだ。
「それでよ」
「その悪い面が問題ね」
「それでそんな酷い家にべったりだとね」
「その人もそんな考えね」
「そう、それでね」
「私も用済みとなればなのね」
「それか飽きたらね」
その場合もというのだ。
「本当によ」
「ぽい、ね」
「そうなるわよ」
「誰が自分の子供にそうなって欲しいものか」
父も言ってきた。
「もういらないって捨てられたらな」
「嫌よね」
「それでいいとか言う親いたらな」
「おかしいわよね」
「ああ、だから咲もな」
「平気で犬を捨てる様なお家にはなのね」
「行くな、命を粗末にする家にはな」
絶対にと言うのだった。
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