イベリス
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第五十二話 夏になる前にその三
「モコは人間が出来ること出来ないからね」
「ああ、犬だからな」
「それでも家族でね」
「人間の中にいるからな」
「そうしてあげないとね、いつもモコには癒されてるしね」
モコのその姿を観てだ、咲は思わず微笑んだ。そのうえでの言葉だった。
「そうした意味でお世話になってるしね」
「犬いいだろ」
父は笑って言ってきた。
「そうだろ」
「ええ、お家にいるだけでね」
「番犬にもなるしな」
「トイプードルって番犬になるの」
「吠えてくれるだろ」
このことを言うのだった。
「そうだな」
「ええ、モコもよく吠えるわ」
「トイプードルはそうした種類の犬だからな」
それでというのだ。
「小さいけれどな」
「番犬にもなるのね」
「よく吠えるだけでも違うんだ」
「小さくても」
「そうだぞ、それでもな」
小さくともというのだ。
「役に立ってくれるんだ」
「ああ、吠えたら誰かきたらわかるし」
「だから警戒するだろ、家族が」
「それで役に立つのね」
「しかもトイプードルは元々狩猟犬なんだ」
父はこのことも話した。
「そうだな」
「元々水鳥を捕まえる犬だったわね」
「飼い主が撃って水の中に落ちた鳥をな」
「お水の中に入ってね」
「そうしたことをする犬だからな」
それ故にというのだ。
「結構強くもあるんだ」
「小さいけれど」
「だから番犬としても役立つんだ」
「そういうことね」
「だからな」
それでというのだ。
「番犬にもな」
「モコはなってくれるのね」
「いざとなればな」
「そうなのね、あんた立派な娘ね」
「ワン」
モコは咲の今の言葉に嬉しそうに鳴いて応えた、ケージの中に座っているがそこから尻尾をぴこぴこと振って応えた。
そのモコを見てだ、咲はまた言った。
「とてもそうは見えないけれどね」
「けれど犬でな」
「しかも元々狩猟犬だし」
「強いんだ」
そうした犬だというのだ。
「これでな」
「そうなのね」
「ただ小さいことはな」
「事実よね」
「トイプードルはな」
この種類の犬はというのだ。
「そのことはどうしようもないからな」
「そのことも考えて」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「大事にしていこうな」
「家族としてね」
「ああ、犬を大事に出来ないとな」
父はこうも言った。
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