イベリス
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第五十二話 夏になる前にその二
「だからお散歩の時間もね」
「夏は朝早くと夕方ね」
「間違っても日中は行かないわ」
決してというのだ。
「モコによくないから」
「そこまで気を使わないとね」
「駄目だからね」
「そうするのね」
「夏はね」
この季節はというのだ、今の梅雨の時期も含めて。
「こうしてよ」
「毛を短くして」
「それでお散歩の時間も考えてね」
「モコが暑くない様にするのね」
「そうしていくわ、モコは家族でしょ」
「ええ」
咲は母にその通りだと答えた。
「私達のね」
「お父さんお母さんから見れば娘でね」
「私にとっては妹ね」
「私達から見れば次女だから」
咲が長女でというのだ。
「だからよ」
「ちゃんと大事にするのね」
「公平にね、だから人間と犬の違いも頭に入れて」
そして理解してというのだ。
「それでね」
「やっていくのね」
「そうよ、そしてね」
そのうえでというのだ。
「夏は毎年よ」
「そうしていくのね」
「それでお部屋も涼しくして」
このことにも気を使ってというのだ。
「お水もね」
「沢山あげるのね」
「私達も夏はお水沢山飲むでしょ」
「というか飲まないとね」
さもないと、とだ。咲は母にどうかという顔で答えた。
「生きていけないわ」
「そうでしょ」
「もうね」
それこそというのだ。
「夏はお水をどんどん飲まないとね」
「すぐに脱水症状や熱中症になるわよ」
「ええ、汗をよくかくし暑いしでね」
「だからよ」
「お水はよく飲むべきね」
「それは犬も同じよ」
つまりモコもというのだ。
「だからよ」
「お水を沢山あげるのね」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「快適でいられる様にするのよ」
「そうよね」
「本当に気をつけないとな」
父はそのモコを観ながら話した、観ればケージの中にいる彼女はそこから家族をきらきらとした澄んだ目で述べた。
「駄目だな」
「私達も夏はそうしたことに気をつけてるし」
「モコもな、ましてモコは犬だからな」
「自分じゃ何も出来ないわね」
「他の家族が何とかしないとな」
人間が出来ることは出来ないというのだ、毛を短くしたり水を多く飲むことがというのだ。
「だからな」
「私達がするのね」
「そうだ、だからな」
それでというのだ。
「モコには家族でな」
「大事にしていくのね」
「いつもな」
「そうしないと本当に駄目よね」
咲もそれはと頷いた。
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