狸のお友達
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第一章
狸のお友達
狸のクー子は八条動物園で家族と一緒に暮らしています、いつもご飯を沢山食べてよく寝て幸せに過ごしています。
そんなクー子のところに一匹の黄色い雄の蝶々が来ました。
「貴方は誰なの?」
「僕?モンキチョウだよ」
蝶々はクー子に答えました。
「名前はないよ」
「名前ないの」
「そうなんだ、虫で名前があることはあまりないよ」
「そうなのね」
「うん、君はあるのかな」
「クー子っていうの」
クー子は自分の少し斜め上を飛んでいる蝶々を見上げながら答えました。
「この動物園に生まれた時からいるの」
「そうなんだ」
「ええ、それで貴方は何処で暮らしているの?」
「家はないよ」
蝶々はクー子に答えました。
「蝶々には家がないからね」
「そうなの」
「そうだよ、こうして飛んで休みたい時に休みたい場所でね」
「休んでいるのね」
「それが蝶々だよ、ただここが気に入ったからね」
それでというのです。
「できたらずっとね」
「ここにいたいのね」
「そうしていいかな」
「いいわ。私のお家はここにあるけれど」
動物園の狸のコーナーにあります。
「そこに入ってもいいわ」
「いいんだね」
「虫だからね」
「そうなんだ、じゃあ時々ここに来させてもらうね」
「その時はこうしてお話しましょう」
クー子は蝶々ににこりと笑って言いました、そうしてでした。
クー子は時々狸のコーナーに来た蝶々とお話をして次第に彼女の兄弟達も入れて楽しく遊ぶ様になりました。
春にそれがはじまってです、夏になると毎日になって秋にはすっかり仲良しになっていました。ですが。
秋が終わろうとしているその時にでした、蝶々はクー子に言いました。
「虫は冬は動けないんだ」
「どうしてなの?」
「寒いからだよ」
狸のコーナーの中で寝て丸くなっているクー子の顔の傍に止まって言うのでした。
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