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おっちょこちょいのかよちゃん

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212 イスラムの戦士、サラディン

 
前書き
《前回》
 シャルル・リゴーと交戦するかよ子達はリゴーの槍による結界消失、さらに杖を落としてしまって奪われかけるも何とか杖を死守し、リゴーを撃破した。そして剣を本部へ運ぼうとする三河口、湘木、冬田は義教という男の軍勢から襲撃される。迎撃を試みる一同だが、数が多すぎて苦戦を強いられる。そんな時、彼らを救いに訪れたのはサラディンという男だった!! 

 仏教では仏法の不思議な力(特に「犬夜叉」などの作品)を「法力」と称されるのですが、イスラム教ではそれに対応する特殊な力は何か調べても解らなかったので、ここでは「聖力」という私の完全な造語を使用させていただきました。イスラームの読者がいましたら勝手な事をして申し訳ございません。 

 
 本部の管制室。イマヌエルが三河口のいる地点を確認する。
「剣を狙う追っ手か・・・」
「健ちゃん、大丈夫かね?」
 奈美子が甥を心配した。
「いや、機械が無力化されているとはいえ義教は以前、濃藤すみ子君達と交戦してやられている。その恨みも募っているから彼の部隊も編成を強化している筈だ」
 まき子は別の点が近づいて来ているのを確認する。
「そういえば別の部隊が来ているわね。これはここの世界の人達ね」
「ああ、それはサラディンという戦士だ」
「サラディン・・・?」

「剣を取り返して本部に運んでいる者だな?」
 サラディンと名乗った男は確認する。
「ああ、そうだ」
「ここまでよく耐えて来られた。アラーの力で撃退する!」
「何が『あらー』だ!馬鹿馬鹿しい!」
「馬鹿馬鹿しいと思うならば裁きを受けてみるがよい!」
 サラディンの剣の聖力(せいりき)と義教の数珠の法力がぶつかり合う。
「南無阿弥陀仏!」
神は偉大なり(アッラーフ・アクバル)!」
 三河口達は仏教の力とイスラム教の力が攻め合う姿を見て思わず息を呑んで見ていた。その時、三河口が我に返る。
「いかん、見てる場合じゃなかった!」
「ああ、そうだったな!俺達も戦わねえと!」
 三河口は威圧の能力(ちから)を出して義教の兵達に圧力をかけて湘木やサラディンの兵達に有利なように傾くようにした。義教の兵が次々と倒され、戦力を削がれていく。
「よし!」
 湘木も斧で水の能力(ちから)を駆使して激流を出し、水の槍となって兵を串刺しにしていく。冬田も怠ける訳にいかず、金属の能力(ちから)を使って鋼の槍を無数に出して攻撃した。
「うおおおお!!」
「ぬおおおお!!」
 義教とサラディンはぶつかり合い続けている。
「これで死ねい!」
「貴様ごときにあっけなく倒される私ではないぞ!」
「・・・、湘木、そっちの義教の兵は殆ど倒したか?」
「ああ!!」
「なら俺達もサラディンに加勢するぞ!」
「おうよ!」
 三河口が威圧の能力(ちから)を出した。湘木も斧を振る。
「・・・な!?」
 義教の法力が弱まる。
「助太刀感謝する!」
 サラディンの剣から雷が出る。
「うおおおお!!」
 義教が黒焦げにされる。
「ムハンマドの力よ、この者を火獄の刑に処す事を願わん」
 サラディンが唱えた。義教は更に燃えていく。
「まだ、まだ・・・!」
「悪あがきもいい加減にしろ!」
 湘木が斧を振るった。炎の能力(ちから)でサラディンの炎と混ざり合わせ、強力な炎を形成させた。そして・・・。
「私も手伝いましょう」
 平安時代の歌人のような人物が現れた。
「何だ、貴様は・・・?」
 その人物は雷雲を呼ぶ。そして落雷の攻撃が義教を襲った。
「があっ・・・!!」
 義教は数秒後に光と化していった。
「やったか・・・」
「よくやった!そしてそこの者、礼を言っておく」
「いえ、私達ももう少し早く来ていれば・・・」
 その歌人のような人物に連れられていたかのように四人の少年少女が雲に乗って現れる。
「遅くなってごめんたい!」
 博多弁で一人の少女が謝った。
(福岡から来た子か・・・)
 三河口はすぐに察した。
「いや、気にしないでいいよ。この人達に助けられたからね」
「そこの少年少女よ。貴様らは確か『雷の山』の守護に赴く者達だな?」
 サラディンが確認する。
「あ、はい!」
「あそこはこの世界でも重要な場所と聞く。急いで合流したまえ」
「はい!」
「では、私も失礼」
「道真さん、行こう!」
 道真と呼ばれた人物と四人組の小学生は雲に乗って移動した。
「ところでサラディンとか言ったな?」
「何だ?」
「聞いた話ではイスラムの為に戦い、エジプトやシリアを征服し、十字軍と激しい戦いを行ったそうだが、俺達はあんたが信仰しているイスラム教の人間でも敵対していたキリスト教徒でもない。そんな人間にも味方になってくれるのか?イスラム教は異教徒には厳しいというイメージがあるんだ」
 三河口は質問した。
「確かに貴様の言う通り、私はアラーの為に戦って来た。だが、他の宗教が悪いという考えではない。私は戦士であっても無駄な殺戮は避けたい身であり、武器を持たぬものを殺すなどといった事は野蛮な事。戦士のやる事ではないのだ。私は誰がどの宗教を信仰するのは自由だと考えている。だからこそ、私は貴様らに助太刀したのだ」
「そうか、ありがとう。また会ったら一緒に戦おう」
「そうだね、剣を奪還した勇士どもよ。本部の者も待っているぞ」
「ああ、失礼する」
 三河口達は冬田の羽根でまた移動するのだった。
「よし、東へ向かうぞ!」
 サラディンは兵を率いて東へと進むのであった。

 羽井玲衣子。本部近辺の守備を担う福岡の小学生であり、学校の友達三名と共に雷の山へと急ぐ。
「道真さん、あの雷の山ってのはどげんとこなん?」
 玲衣子の友人の一人・吉原千鶴(よしわらちづる)は道真に聞く。
「雷の力の源となる山ですよ。私は嘗てそこに住んでいたのです」
「よし、うちらで取り戻したるばい!」

 本部の一室では剣を輸送する三河口から連絡が来ていた。
『こちら三河口健!義教とかいう奴の襲撃をサラディンや本部守備班の小学生達の援護で何とか切り抜けた!今そちらへ向かう!』
「了解。気を付けて行って来てくれ」
 イマヌエルが応答した。
「健ちゃん、あともう少しだから頑張るんよ!」
『おばさん・・・。はい!』
 連絡が終了した。
「あのサラディンって人は凄い人なのね」
 まき子は感心した。
「ああ、イスラムの世界でも英雄とされているからね」
「それでは私は別の用件ができましたので少し失礼致します」
 フローレンスが管制室から出て行った。
「フローレンス、どこへ行くのかしら?」
「おそらくだが、君らの世界にいる政府の所じゃないかな?」
 イマヌエルは推測した。

 フローレンスは本部のある出入り口を通り、生前の世界と死後の平和を正義とする世界を繋ぐ道を通る。その先は日本のとある場所。それは松の茂る場所だった。
「答えが出ましたか・・・」
 ここは静岡県にある三保の松原。そしてフローレンスはさらにある場所へと向かう。目的は一人の少女の家だった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「戻ってきて欲しい」
 杉山はレーニンにある事を希望する。そしてかよ子達が元いた世界、3年4組の教室は寂しさが漂う中、山根と永沢は藤木の話をしていた。永沢の心無い発言にたまえ、とし子が反発する。そして笹山も我慢できなくなり、とうとうある決断を下す・・・!! 
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