イベリス
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第五十一話 水着その十二
「いいわね」
「そんな人は」
「そう、何もね」
困っていてもというのだ。
「助けてとすがってきてもよ」
「助けないことね」
「その時だけ口だけ感謝を言っても」
「それだけで」
「他の人が困っていてもね」
「助けなくて」
「逆に不平不満とか悪口をね」
そうしたことをというのだ。
「言うから」
「それでなのね」
「だからね」
それでというのだ。
「もうよ」
「助けなくていいのね」
「ええ、後ろ足で砂かけられたくないでしょ」
「そんな性悪の犬みたいなことはね」
「されたくないでしょ」
「誰だってね」
「だから」
それ故にというのだ。
「そうした人はね」
「助けなくていいのね」
「一切ね、ただね」
「ただ?」
「こうした人って反省しないし」
愛はそうした輩のことをさらに話した。
「ずっと変わらないのよ」
「そうなのね」
「もう勝手に自分が偉いとかね」
その様にというのだ。
「思ってよ」
「天狗になるの」
「何処が偉いかわからないけれど」
「それでもなのね」
「自分がこの世で一番偉いとか」
その様にというのだ。
「思うのよ」
「周りは何処がって思っても」
「勝手にね」
「そんな性根でなのね」
「というかそんな性根だからこそね」
それ故にというのだ。
「なるのかもね」
「性格が悪いと」
「あんまりにもね」
「変な考えにも至るのね」
「そうかもね」
「そうなのね」
「性格が駄目だと」
即ち悪いならというのだ。
「それもかなりね」
「幸せになれないのね」
「相当性格が悪くても社会的に成功する人もいるわよ」
例としてはアーネスト=キングだ、第二次大戦中のアメリカ海軍のトップとして辣腕を振るった、軍人としては優秀だが毒舌家で酒やギャンブルにのめり込み人種的偏見も強いという問題だらけの人物だった。
「けれどその能力が天才とかよ」
「そうした人でもないとよね」
「けれど成功はしても最後はね」
「駄目になるのね」
「だって付き合いたくない人とずっとお付き合いしたくないでしょ」
「やっぱりね」
咲もそれはと頷いた。
「幾ら才能があってもね」
「そのお仕事以外ではね」
「性格が悪かったらね」
事実キングは二次大戦が終わった直後に辞任を申し出ても遺留されなかった、文字通りお払い箱にされて後は倒れて十年位寝たきりになって世を去っている。
「そうでしょ」
「そうよね」
「天才でもそうなるから」
「やっぱり性格ね」
「そう、それが第一よ」
「性格がいいと幸せにもなれるのね」
「性格がいいと周りも自分も幸せになるのよ」
愛は言い切った。
「私もそのこと気をつけてるし咲ちゃんもね」
「ええ、気をつけていくわ」
咲も頷いて約束した。
「これからは」
「そうしてね」
「ええ、自分の為にもね」
性格はいい様になろうとだ、咲は頷いた。水着を買った後でこうしたことも教わった。そのうえで愛と一緒に帰ったのだった。
第五十一話 完
2022・2・15
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