英雄伝説~西風の絶剣~
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第67話 新たな物語の始まり
前書き
原作から内容や設定に変更が度々ありますのでお願いします。
side:??
どこかの場所、明るい緑色の髪を持つ赤いスーツの人物が夜の空に黄昏ていた。少年とも言えそうな幼い顔立ちだが身にまとう雰囲気は決して可愛らしい物ではない。
「……ふふ、君が一番乗りか」
「久しいな、カンパネルラ」
カンパネルラと呼んだのは白い髪のコートを着た男性だった。整った顔立ちをしているがその瞳は黒く濁っていた。まるで生きる希望を失った人間のような……
「久しぶりだね、『剣帝』。それともレオンハルトって呼んだ方が良いかい?リベールでは随分と大活躍だったみたいだね。しかも珍しく傷を負ったとか……」
「相変わらずよく喋るやつだな」
カンパネルラは親しそうにレオンハルトに話しかけるが彼は表情を変えることなく淡々とそう答えた。
「そういうお前こそどうだったんだ?遊撃士協会帝国支部の襲撃……あのカシウス・ブライトが出てきたんだ。さぞや盛り上がったんじゃないのか?」
「まあね。あのおじさん武力だけでなく感も頭の良さもヤバくてさ、僕の事は知られていないのにまるで知ってるかのように対策を取られちゃって……僕も少し本気を出しちゃったよ」
カンパネルラは実に楽しそうにそう答える。実際カシウスの手で彼らが受け持つ猟兵団を一つ潰されてしまったが、カンパネルラはなんてことなさそうに話を続ける。
「まあ結果的には時間は稼げたでしょ?それともやっぱり『剣聖』と戦ってみたかった?」
「……まあな」
「あれれ?そうでもなさそうだね、もしかしてそれなりに面白そうな子を見つけたのかな?例えば剣聖の娘か……それとも例の猟兵兄妹とか?」
カンパネルラはレオンハルトがカシウスと戦いたがっていた事は知ってるのでからかう名目でそう聞く。だがレオンハルトはそこまで残念そうにしていないレオンハルトを見て首を傾げたが直ぐにその理由に感づき笑みを浮かべた。
「ふん、まだまだあいつらは未熟だ。そこまでの脅威にはならないさ」
「はっ、つまりお前は未熟なガキに傷つけられたって訳か」
そこに何者かが現れてレオンハルトに声をかけた。その人物は黒いサングラスをかけた男性で身にまとう雰囲気は只者ではない凄味を表していた。実際彼とレオンハルトが対峙すると空気が一気に重くなった。
「……久しぶりだな、『痩せ狼』。相変わらず血生臭い奴だ」
「誤魔化すなよ、剣帝。俺はお前を傷つけたっていうガキが気になってしょうがねえんだよ。あの剣帝様に恥を描かせたっていうガキがな」
「あれは受けてやっただけだ。実際は力を暴走させただけの未熟者、お前が戦っても直ぐに殺してしまうだろう」
「その割には珍しく目に闘気が宿ってるじゃねえか。本当に未熟なガキでしかないのならお前がそんな目をするわけないよなぁ?」
レオンハルトは淡々と答えるが痩せ狼と言われた男は挑発するように目を輝かせる。
「……少しうるさいぞ。久しぶりに会ったが手合わせでもするか?」
「はっ、いいじゃねえか。猟兵生活でコソコソしてたからナマってるかもしれねえしな?俺が殺しあいって奴を思い出させてやるよ」
しつこく質問されたことに苛立ったレオンハルトが剣を構えると痩せ狼と呼ばれた男……ヴァルターは嬉しそうに拳を構えた。
「止めなさい、貴方たち」
だがそこに新たな人物が現れて二人に声をかけた。それは着物のような服を着こんだ美しい女性だった。
「『幻影の鈴』か。こうして会うのはいつぶりだ?」
「半年は会っていなかったわね。それよりも剣帝、痩せ狼、出会っていきなり戦おうとするのは止めて頂戴。貴方たちが本気で戦ったらこの基地が壊れてしまうでしょ?」
「そうよ、レーヴェは私とお喋りするんだから」
幻影の鈴と呼ばれた女性……ルシオラはレオンハルトとヴァルターに戦いを止めるように話すと、また誰かがそこに乱入してきた。しかも今までと違い明らかに幼い子供の声だった。
「レンか、また一段と腕を上げたんじゃないか?」
「久しぶりね、レーヴェ。貴方には聞きたいことが沢山あるの、だから私とお話しましょ」
レオンハルトは現れた少女をレンと呼び、彼女も彼に対して親しげに返事を返した。
「おいおい『殲滅天使』、そいつは今から俺と戦うんだ。横から割って入ってくるなよ」
「あら、貴方も興味が湧くお話だと思うわ。だって私が聞きたいのは貴方が気になっている子供の話だもの」
「ほう」
ヴァルターが不満そうにレンに横入りするなと言う、それに対してレンはふふっと妖艶な笑みを浮かべて自分が話そうとしているのは彼も興味が出る話だと話す。
「意外ね、貴方が他人に興味を持つなんて」
「当然よ。だって私はその男をどうしても殺してやりたいんだから。それもできれば残酷な方法でね……」
ルシオラはレンとそこまで親しい訳ではないが、知らない仲でもない、だから彼女が他人に執着するのを見て少し意外に思ってそう質問した。するとレンはその愛らしい顔立ちから想像もできないくらいの憎悪に染まった表情でそう返した。これにはさすがのルシオラも少し驚いた。
「かかっ、良い殺気放つじゃねえか。よっぽど恨んでいるみたいだな」
「ええ、私を裏切って幸せに生きてる……許せるわけがないわ」
「お前にそんな顔をさせるガキか、ますます気になるな。味見くらいはしてもいいか?」
「駄目よ、貴方直に熱くなって殺しちゃうじゃない。あいつは私が殺すの」
ヴァルターもレンとそこまで親しい訳ではないがいつも誰かをからかったりするくらい余裕を見せて負の感情を見せない子供だと思っていた。そんな彼女にあそこまでの憎悪の表情をさせる相手に益々興味が湧いたようだ。
「その話、私も聞かせてもらってもよろしいかね?」
すると魔法陣が現れてそこから白いスーツと仮面をつけた男性が現れた。
「『怪盗紳士』か……煩い奴が来たな」
「ははっいきなりのご挨拶だね、剣帝。だが仕方がない!リィン・クラウゼルの話ともなれば興奮もしよう!なぜなら私は彼が描く物語を期待する観客の一人だからね」
レオンハルトは珍しく少し面倒くさそうに怪盗紳士と呟いた。それを聞いた怪盗紳士……ブルブランは怒るどころか高笑いをして話し始めた。
「痩せ狼、君が知りたがっている子供の名はリィン・クラウゼルだ。あの猟兵王に拾われた捨て子で幼いころから彼の英才教育を受けてきた戦いの申し子だよ。まだ十代だというのに赤い星座を始めとした凄腕の猟兵達や裏社会の強者たちと渡り合ってきたという」
「ははっ……!あの猟兵王の子だと!?そりゃいい情報じゃねえか!」
ブルブランはリィンの情報を話し始めるとヴァルターは好戦的な笑みを浮かべた。猟兵王とはこのゼムリア大陸でも最強クラスの実力を持った人物だ、その男が育てた子供なら嫌でも期待が出来るというものだ。
「だが彼の魅力はそれだけではない。彼には『鬼の力』という異能を持っているのだ。その力はとても強力だが理性がなくなってしまう程に暴走してしまうらしい。彼はその力に苦悩していたが今回のクーデター事件を乗り越え力と向き合う事を決めたらしい……素晴らしい!実力者に拾われた幼い少年が様々な人々と出会い戦いの中成長していく姿……まさに物語の主人公じゃないか!」
ブルブランはさらに大きな高笑いをしながら話を続ける。
「確か偶然彼が力を誓う所を目撃したんだっけ?」
「如何にも。かつてエレボニア帝国で彼が力を暴走させる様を偶然目にしてしまった。その時から私は彼の虜になってしまったのさ!」
カンパネルラが前に偶然リィンが鬼の力を暴走させている所を目撃したのか聞くと、ブルブランは肯定する。
「私はその美しくも儚い彼の物語に魅了されてしまった!彼はこの先どのような道を歩むのか?どんな選択をするのか?どうやって力と向き合っていくのか?知れば知る程私の彼への興味は深まっていく!私は彼の物語の虜になってしまった者として世に広めていく語り部になりたいのだ!」
「随分と熱心ね……でも残念。リィン・クラウゼルの物語は私が終わらせるから」
「それもまた一興さ。彼がどのような最期を迎えるのか、それを見届けたいのだ」
「そのリィンって子からしたら酷い話よね、勝手にファンになられてストーカーしますって宣言されたようなものでしょ?同情するわ」
ブルブランはリィンの物語を見届けたいという。それに対してレンはその物語を終わらせるのは自分だと話し、ルシオラは結社の中でも特に変人なブルブランに付きまとわれる事になったリィンに同情した。
「諸君、集まったようだね」
「来たか、教授」
するとそこに眼鏡をかけた男性が姿を現した。それを見たレオンハルトは彼を教授と呼んだ。彼の名はワイスマン、彼こそクーデター事件を裏で操っていた人物だ。
「カンパネルラ、ご苦労だった。カシウス・ブライトを見事足止めしてくれて助かったよ」
「うふふ、僕も楽しい仕事だったよ」
ワイスマンはカンパネルラに労いの言葉をかけると彼は笑顔でそう返した。
「でもさ教授、君の作った計画書を拝見させてもらったけど……随分と楽しそうな内容じゃないか。僕もワクワクしてきたよ」
「道化師である君にそう言って貰えると光栄だよ。でも実際の計画ではもっと楽しんでもらえると思うよ。何故なら今回計画に協力してくれた執行者たちはそれぞれが個人的な目的を持っている。私も、そして彼もね……」
ワイスマンがそう言うと闇の中から誰かが姿を現した。その姿を見た執行者たちはそれぞれ違う反応を見せた。
「彼って確か……」
「ふふっ、ここで会えるなんて思ってもいなかったわ」
「私は一度変装中に会っていたが……これはまた面白い物語になりそうだ」
「はっ、戻ってきてやがったのか」
「……」
ルシオラは意外そうな顔を、レンは嬉しそうな笑みを浮かべた。ブルブランはまた大きな高笑いを始めヴァルターは好戦的な笑みを浮かべる。レオンハルトは何も言わずにその人物を見ていた。
「へぇ、これはこれは……」
そしてカンパネルラは意外そうなものを見る目をしていたが直ぐに興味深そうなものへと変わった。
「紹介しよう、『身喰らう蛇』に復帰した執行者№XIII《漆黒の牙》ヨシュア・アストレイだ」
そしてワイスマンが彼……ヨシュアの名を紹介した。彼は何も言わずただ佇んでいる、そんなヨシュアを見てワイスマンはニヤリと笑みを浮かべた。
「これより福音計画を発動する……」
―――――――――
――――――
―――
side:リィン
俺達は現在飛行船に乗ってリベールに向かっていた。目的は王都グランセル、そこでまずギルドに向かい報告をする手立てだ。現在はフィーが俺の隣の席に座っていて、エステルは俺の前の席に座っている。
「そういえばラウラは来ないの?」
「ラウラはいまだ修行中だって聞いてる。でも必ず駆け付けると彼女は言っていたよ」
エステルが俺にラウラの事を聞いてきたので説明した。
ラウラはクーデター事件の後一度レグラムへと戻った。そこでアルゼイド流の奥義を得て強くなってくると言って……
修行はまだ終わっていないらしいが彼女なら直ぐに来てくれるだろう。
「そっか、久しぶりに会えるかと思ったんだけどまだ修行中なんだね」
「ああ、きっと凄く強くなって戻ってくるよ。俺も楽しみだ」
エステルはラウラに会いたかったようだが直ぐに会えるだろう。俺も彼女の強さがどれだけ上がっているのか気になっている。
「ふーん、リィンがラウラに会いたいのって唯強くなったのを見たいから?それだけじゃないよね、別れる寸前にキスされていたし」
「そ、それは……」
フィーが含み笑いをしながらジト目でそう言ってきた。まあ確かに別れる寸前にラウラにキスされたんだよな、『フィーだけがそなたと口づけしているのは不公平だからな……』と顔を真っ赤にしながらはにかむラウラを思い出して顔が赤くなってしまった。
「わたしとのキスでは動揺もしなかったし……やっぱりリィンはおっぱいが大きい子が好きなんだ。わたしのおっぱいが小さいからドキドキしてくれないんだ」
「そんなことはないぞ!フィーとのキスだって滅茶苦茶ドキドキしたし……!」
不意打ちでされたキスだったが今でも思い出すと心臓がバクバクするんだぞ!なんとも思ってないわけないじゃないか!
「ならもう一回キスしよ?それでリィンのドキドキを確かめさせて」
「うぇっ!?」
フィーの提案に変な声を出してしまった。こ、こんな人目の多い所でキスしろだって!?エステルも見てるのに!?
フィーは「んー」と唇を突き出して俺に顔を寄せてきた。俺はどうしたらいいか分からずワタワタしているとエステルが助け船を出してくれた。
「フィー、それ以上リィン君をからかったら顔がにがトマトみたいになっちゃうわよ」
「ん、残念。まあリィンはヘタレだから仕方ないか」
エステルは苦笑しながらそう言いフィーは溜息を吐いて俺から離れた。
(告白されてからいいようにされ過ぎじゃないか、俺……)
元々マイペースでつかみどころの無かったフィーだが告白されてからはいつも彼女のペースに乗せられてしまう。
そりゃ告白の返事を先延ばししてるヘタレな俺が悪いんだがここまでいいようにされると男として情けなくなってしまう。
それから暫くして飛行船が王都グランセルに到着した。直にギルドに向かいエルナンさんに報告をした。久しぶりに彼に会ったので挨拶をするが元気そうで何よりだ。
「ご苦労様でした、エステルさん。この一か月で随分逞しくなられましたね」
「えへへ、これからはバンバンお仕事をこなしていくからね」
「頼もしい限りですね、いまだに遊撃士の人手不足は解消されていないので頼りにさせていただきます」
遊撃士は憧れる人も多い仕事だが実際は荷物運びや人探し、住民の仕事の手伝いなど雑用がメインなのでカッコいいと思われる要因である魔物退治はベテランが当たることが多い。だから新人は現実と理想との違いに遊撃士を辞めてしまう事があるらしい。それで人手不足らしいんだ。
「そういえばエルナンさん、例の組織について何か聞いていないですか?」
「今のところは目立った話は聞いていませんね。ただここ一か月の間奇妙な事が起きているんです」
俺はエルナンさんに結社について聞いてみると、奇妙な事が起きていると彼は答えた。
「奇妙なことって?」
「例えば各地に生息していた魔獣の生息が変化していたり現存していた大型魔獣が強化されていたりと……幸いまだ人的な被害は出ていませんがそれも時間の問題でしょうね」
「新たな魔獣の出現に魔獣の強化……これも結社の仕業かしら?」
「そう決めつけるには情報が足りていませんね……唯この一か月の間で何かが確実に変化しています」
フィーが首を傾げて質問するとエルナンさんが魔獣の生息地が変化していたり強くなったことを教えてくれた。エステルは結社の仕業かと言うがこの時点ではまだ分からないな。
「遊撃士協会としても放っておけない案件です、既に調査を開始しています。それでエステルさん達にもその調査に協力していただきたいのです」
「調査って何をすればいいの?」
「それは『身喰らう蛇』の調査です」
『ッ!?』
身喰らう蛇……その名前が出た事で俺達に緊張が走った。
「とは言っても結社を直接調べる訳じゃありません、なにせ遊撃士協会でもその存在は噂程度しか確認できていませんから。しかし前回のクーデター事件にかかわっていた可能性が高い以上今回の異変も全く関係がないとは言えません……ですのでエステルさん達には各地を回って頂き仕事をしながら結社の動向を調べてほしいんです」
「地味だけど大事な仕事だね。情報は何よりの武器だし」
エルナンさんの説明にフィーも頷いた。まず情報を集めないことには何もできないからな、こういった地道な活動は目立たないがとても大事な仕事だ。
猟兵の仕事に情報を集めるのを専門とする人がいるがまあ地味だ、でもその人たちのお蔭で俺達は安心して仕事が出来るしな。
「既にシェラザードさんとアガットさんも各地を回って情報を調べてもらっています」
「ならあたし達は二人と合流するって事?」
「いえ本来ならどちらかと合流して行動してもらおうと思いましたが協力員としてリィンさんとフィーさんもいます。ですのでエステルさんはお二人ともう一人の遊撃士の方と共に行動してほしいんです」
どうやら既にシェラザードさん達が行動を始めているようだな。でももう一人の遊撃士って誰だろうか?
「アネラスさん、入って……」
「弟弟子くーん!」
エルナンさんが何か言おうとすると奥の部屋から誰かが勢いよく飛び出してきて俺に抱き着いた。この人は……
「姉弟子?もう一人の遊撃士って姉弟子だったんですか!お久しぶりです!」
「うん!久しぶりだね!こうしてまた会えて嬉しいよ!
俺は久しぶりに会えた姉弟子……アネラスさんを見て嬉しくなってしまい抱きしめ返した。
「アネラスさん!久しぶり!」
「エステルちゃんも久しぶりだね!また逞しくなっちゃって……随分と鍛え込んだんだね」
「そういうアネラスさんだって強くなってるわね」
「うん!クルツ先輩達にいっぱい揉まれたからね!私だってエステルちゃんに負けていないんだからね!」
そういえば姉弟子は遊撃士の強化合宿に行ったんだったな。相当鍛えてきたのが分かるよ。
「それと……」
「……」
「あー!いたー!フィーちゃーん!!」
姉弟子はフィーを探してキョロキョロしていたがフィーはいつの間にか物陰に隠れていた。でも直ぐに姉弟子に見つかってしまい抱っこされた。
「フィーちゃん久しぶりだねー!あーん、相変わらずちっちゃくて可愛いー!」
「暑苦しい……」
姉弟子に頬すりされているフィーは嫌そうな顔をする。姉弟子は変わらないな、見ていて安心するよ。
「アネラスさん、話を進めてもよろしいでしょうか?」
「あっ、ごめんなさい!話を続けてください」
姉弟子はエルナンさんにそう言って頭を下げた。でもフィーは抱っこしたままなので彼女はイヤイヤと体をよじって抜け出して俺の背中に隠れた。
「そういえばクルツさん達は帰ってきていないの?」
「グラッツさんはアガットさんと、カルナさんはシェラザードさんと合流する予定です。流石に得体の知れない組織を相手に単独行動は危険ですので」
「あれ?クルツさんは?」
エステルがクルツさん達の事を聞くとそれぞれの行動を教えてもらった。でもクルツさんはどうするんだろうか?エステルも気になったのか彼の事を聞いた。
「クルツさんは七曜教会の方と会う事になっています。今だに症状が出てくることがあるらしいので……」
「えっ、そうなんですか?私との訓練の時はそんなそぶりを見せなかったのに……」
「症状と言っても時々頭が少し痛くなるくらいらしいです。しかし重くなってしまったらいけないので丁度以前ルーアンで発見された古代遺物の回収とグランセル城の地下の遺跡を調べに来ていた七曜教会の神父に協力を要請したんです」
「そうだったんですか」
クルツさんは何者かに襲われた影響なのか未だに何らかの後遺症が残っているらしい。姉弟子は心配するが彼の為に七曜教会に協力してもらうとエルナンさんは話す。
七曜教会か……まあ警戒しておくに越したことはないか、団長も警戒しておけって言っていたしね。
「さて、話を戻しますと現在シェラザードさん達にはそれぞれボースとロレントに向かって貰っています。ですので皆さんにはルーアンに行って貰いたいのです」
ルーアンか、フィーともそこで再会したし思い入れのある場所だ。最初に行く場所がルーアンならフィーも喜びそうだ。
「ル―アン……クローゼや孤児院の皆は元気にしてるかな……」
「もしかしたら寄ることもあるかもしれないし顔くらいは見せに行こうか」
「うん!」
フィーはルーアンで暫く過ごしていたから会いたい人も多いだろう。俺は顔くらいは見せに行こうかと彼女に言うと嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
さあ、ここからが物語の始まりだ。結社に俺の中の異能……問題は多くて大変だがフィーと一緒なら乗り越えられる、俺はそう思い気合を入れなおした。
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