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少年自衛官

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第三章

「これが」
「上には上がいるか」
「この幹部候補生学校より厳しいところもある」
「そうなんだな」
「航空学生も厳しいからな」 
 菊地は彼等の話もした。
「こちらも幹事付なんてって感じだよ」
「赤鬼青鬼もものとしない」
「そうなんだな」
「航空学生も」
「少年自衛官並かそれ以上に厳しいから」
 だからだというのだ。
「そうなんだよ」
「そう言われると俺達はまだましか?」
「防衛大学、防大も凄かったっていうしな」
「もう戦前の兵学校はこんなのじゃなかったっていうし」
「赤煉瓦の監獄だったっていうな」
「それじゃあ俺達もぼやかないでな」
 候補生学校の厳しさにというのだ。
「やってみるか」
「やっていったら身に着くしな」
「それでよくもなるか」
「怒られながらでもな」
「俺だって少年自衛官になりたての頃は全く出来なかったんだ」
 菊地は自分のことも話した。
「それでどれだけ怒られたか、けれどな」
「鍛えられてか」
「何度も怒られてか」
「そうしてか」
「身に着いたんだ、だから今それなりに出来ているんだ」
 候補生学校の中でも怒られないというのだ、生活や訓練の中で。
「だから皆もな」
「そうだな、やっていくか」
「そうしたら出来るな」
「今は外出の時の服装検査でも引っ掛かってばかりだけれど」
「それもな」
「絶対に皆引っ掛からない様になるからな」
 同期の者達に断言した、そしてだった。
 分隊の者は秋も半ばになると殆ど誰も服装やベッド、整理整頓のことで言われなくなった。外出の時のチェックももう全員合格なので素通り状態となり。
 皆慣れた、それで菊地は同期達に言った。
「俺の言った通りだろ」
「ああ、俺達も出来た」
「出来る様になった」
「お前みたいにな」
「そうなれるんだ、鍛えられたらな」
 それならとうのだ。
「皆出来る様になるんだ」
「不可能と思ったことでも」
「毎日必死にやっていれば出来る」
「そういうことだな」
「ああ、あと数ヶ月で卒業だ」
 三月末のその時になるというのだ。
「だから今のメンバー全員で卒業しような」
「そうしような」
「絶対にな」
「もう一年の教育期間の折り返しは過ぎた」
「それじゃあな」
「あと少し、頑張っていこうな」
 菊地は同期達に言った、そして一分隊の者はここから誰一人抜けることなく卒業出来た。そして海上自衛官として赴任することが出来たのだった。辛い経験にも慣れて。


少年自衛官   完


                  2021・12・12 
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