子供の時は駄目でも
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第一章
子供の時は駄目でも
田上好美はこの時母に尋ねた。
「お母さん、今日お寿司屋さん行くのよね」
「お兄ちゃんが小学校に入るでしょ」
母の真礼はこう娘に答えた、面長で垂れ目で唇はピンクで顔立ちは穏やかな感じだ、黒髪を長く伸ばし背は一五五程で均整の取れたスタイルだ。
「だからね」
「お祝いでなのね」
「お兄ちゃんそしてお母さんとね」
「私もよね」
「そうよ」
自分とそっくりの顔立ちの娘を見て話した。
「家族全員でね」
「お寿司屋さんに行って」
「お寿司を食べてね」
そうしてというのだ。
「お祝いをするのよ」
「そうなの。私ね」
好美はここまで聞いて顔を曇らせて母に言った。
「お寿司は好きだけれど山葵はね」
「食べられないわね」
「だって辛いから」
だからだというのだ。
「山葵抜きじゃないと駄目」
「わかったるわ、お兄ちゃんもだしね」
母はとても嫌そうに言う娘に微笑んで答えた。
「あんたtお兄ちゃんのお寿司はね」
「山葵なしなのね」
「それで注文してもらうわ」
「うん、だったらいいわ」
好美は母に笑顔で応えた。
「それじゃあね」
「ええ、お寿司屋さんに行きましょう」
こう話してだった。
好美は家族と共に寿司屋に行った、そうしてだった。
家族四人で店のカウンターに座ってそれぞれ注文したが。
好美はここでも母に尋ねた、一家全員で一張羅を着て和風のカウンターの席に座って寿司を注文しようとしている。
「お母さん、山葵抜きでね」
「僕もだよ」
その小学校に入る兄の雄馬も言ってきた、黒髪は短くやんちゃな感じである。
「山葵なんて食べられないよ」
「あんな辛いのないわ」
「お鼻につーーーんと来て泣きそうな位だよ」
「私この前食べて泣いたし」
好美は実際にと話した。
「だから山葵は絶対になしにして」
「さもないと食べられないよ」
「わかってるからな」
二人に父の淳が笑顔で言った、穏やかな小さい目で色黒で面長だ。まだ三十代前半だが顔には皺が多い。黒髪は奇麗に整えて一七二位の背で痩せている。
「安心しろ、上の握り四人前で」
「二つは山葵抜きでお願いします」
真礼は夫に続いてカウンターにいる板前に注文した。
「それで」
「わかりました」
初老の板前は笑顔で応えた。
「二つはですね」
「山葵抜きで」
「そうしますね」
笑顔で応えてだった。
板前は早速握りはじめた、そうしてだった。
好美も兄も寿司を食べはじめた、すると。
好美は鮪の握りを食べながらこんなことを言った。
「何でお寿司に山葵なんて入れるの?」
「あんなに辛いのに」
兄も言った。
「それなのに」
「あんなの食べられないよね」
「食べられる筈がないよ」
「お刺身にも使うし」
「この前お刺身のお醤油に入れたけれど辛かったよ」
「物凄くね」
「唐辛子も生姜も辛いけれど」
それでもというのだ。
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