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イベリス

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第四十九話 自分しかない人間その九

「何の努力もしていないなら駄目だけれどね」
「お年寄りでもなのね」
「若し七十年間遊んでばかりでね」
 そうしてというのだ。
「自堕落にね」
「遊びでも人生の経験得られるわね」
「そうよ、人生の勉強の場は色々でね」
「遊んでもよね」
「得られるのよ、だから遊び人でもね」
 そう言われる人でもというのだ。
「確かな人生の経験は積めるわ」
「そうよね」
「けれどただ自堕落だったら」
 それならというのだ。
「もうね」
「七十年以上生きていても」
「性悪の子供がそのままお爺さんお婆さんになった」
 そうしたというのだ。
「どうしようもない人になるわ」
「所謂糞爺とか糞婆って言う人達?」
「そうよ、毒親や会社でも害にしかなってなくて」
「お年寄りになったら」
「そう呼ばれる人達になるわ」
 糞爺や糞婆と言われる様なというのだ、人間ただ年齢を重ねるだけでは何の意味もないということである。
「学生時代も就職しても結婚して家庭を持ってもね」
「何も努力しないで」
「経験を積まなかったらね」
「何にもならないのね」
「そして言うこともね」
 それもというのだ。
「中身がないのよ」
「そうなるのね」
「けれど確かに生きてきて」
 そうしてというのだ。
「人生の経験を積んだらね」
「言うことにも重みがあるのね」
「そうよ、若くてもそれだけの経験を積んでいたら」
「重みがあるのね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「私もまだ本当に人生の経験はね」
 愛は考える顔で咲に述べた。
「まだまだよ」
「お姉ちゃんもなの」
「そうよ、そんなお爺さんお婆さんと比べたらね」
 それこそというのだ。
「若造よ」
「はっきり言ったわね」
「だって実際だから」
「お姉ちゃんも若造なの」
「もっと言うと鼻タレ?」
「子供ってことなの」
「そうよ、だから咲ちゃんに言うこともね」
 このこともというのだ。
「間違えてることが多いかもね」
「そうなの」
「ええ、だからそこは気をつけてね」
「お姉ちゃんも間違えるの」
「間違えるわよ、人間誰だって間違えるし」
 愛は咲に答えて話した。
「若いと経験もあまりなくてね」
「余計になのね」
「間違えるものよ」
「そうなのね」
「だから私の言葉を聞いてくれることは嬉しいけれど」
 それでもというのだ。
「鵜呑みにいないでね、誰の言うことでもね」
「鵜呑みにしないことなの」
「そうしてね、話を聞いて」
 そうしてというのだ。 
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