ハッピークローバー
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第二十話 楽しく食べられるその三
「狂犬病持ってるかもってことでね」
「嫌いだったの」
「そうだったのよ」
「それまた極端ね」
富美子はご飯を食べながら顔を顰めさせて聞いた。
「幾ら何でも」
「実際かなりの変人さんだったってね」
「有名だったのね」
「ええ、潔癖症過ぎるって」
「聞いていてもそうね」
「そうね、ただ私この人の作品好きなの」
泉鏡花の作品はというのだ。
「だから読んでいて幸せよ」
「そうなのね」
「それであんたは今よね」
「ええ、好きな食べものばかりでね」
姉にあらためて話した。
「幸せよ」
「それは何よりね」
「うん、お姉ちゃんも嫌いじゃないわよね」
「豆苗にしても味はね」
またこの話をした。
「そうよ」
「それは何よりね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「あんたこの後飲むの?」
「お酒?飲むって」
「ええ、飲むの?」
「今日は予習復習しないといけないから」
だからだとだ、富美子は姉に答えた。
「だからね」
「あんたあまり勉強しないでしょ」
「けれど今日はね」
「そうしないとなの」
「よくないから」
「何かあったの」
「ちょっとわからないところがあってね、数学で」
この教科でというのだ。
「だからね」
「それでなの」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「今日はお酒飲まないわ」
「そうするのね」
「ええ、お姉ちゃんは飲むのね」
「ご飯食べて」
そうしてとだ、美奈代は富美子に答えた。
「その後でね」
「飲むのね」
「ストロングね」
「ああ、あれね」
「あれ安いでしょ」
「しかもアルコール度高いしね」
「おまけに飲みやすいから」
だからだというのだ。
「よく飲むのよ、最近ね」
「かな恵と一緒ね」
富美子は姉との今のやり取りで彼女を思い出した。
「あの娘も最近ね」
「ストロング飲んでるの」
「そうなの」
「あの娘お酒好きだしね」
美奈代はかな恵について笑って述べた。
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