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鬼婆の真実

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第二章

 そうしてだ、老婆と共にちゃぶ台に座って居間でコロッケと味噌汁と漬けものそれに納豆をおかずにしてだった。
 白いご飯を食べつつ老婆に言った。
「ここに来て何年だ」
「もう二百年だね」
「そんなになるか」
「山からこの街に入ってね」
「そうか、それでこの店もやってか」
「二百年だよ」
 それだけ経つというのだ。
「最初は餅屋であの戦争が終わって駄菓子屋にしてね」
「もうそれだけか」
「長いね」
「そうだな、しかしお前と夫婦になってな」
「四百年だね」
「わしは山爺でな」
 亭主は笑って話した。
「そしてな」
「あたしは山姥でね」
「一緒に山で暮らしてな」
「山菜や茸や木の実を採ってね」
「獣や魚を獲って暮らしていたな」
「それが人里に下りてだよ」
「こうして暮らしてな」
 そうなってというのだ。
「二百年だよ」
「そうだな、長いな」
「全くだよ、けれど皆思ってもいないだろうね」
 老婆はソースをかけたコロッケを箸で切って口の中に入れそれをおかずにしてご飯を食べつつさらに話した。
「山姥と山爺だって」
「その夫婦だってな」
「思わないだろうね」
「妖怪だってな、二人共」
「そうだね、けれどこうしてだよ」
「妖怪だって人里にいてな」
「楽しく暮らしてるんだよ」
 亭主と向かい合って座って食べつつ話した。
「ずっとね」
「そうだな、しかしお前鬼婆って言われるけれどな」
「山姥ってよくそう言われるしね」
「本物だとは誰も思わないよな」
「人は食わないけれどね」
「ははは、人なんて食うか」
 亭主は笑って話した。
「あんなの食ったことないぞわしは」
「見るからにまずいっていうのに」
「骨と皮ばかりでな」
「そんなの食うなら山の獣食うよ」
「食い切れないと干したり燻製にしてな」
「全くだよ、そんなの食う位なら今はこうしたの食うよ」
 老婆は亭主と笑って話した、そうしてだった。
 コロッケや味噌汁をおかずにご飯を食べてだった。
 同じ部屋に床を敷いて寝た、そうして亭主を仕事に送り出してから店を開いた。そのうえで鬼婆と呼ばれつつ今日も駄菓子屋の中にいるのだった。


鬼婆の真実   完


                   2022・4・20 
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