イベリス
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第四十七話 思わせぶりな態度その八
「魔が出入りし生まれてもその活動を最小限に抑えることもです」
「結界があってですか」
「そうなので」
「結界は必要なんですね」
「若し完全な無神論者が独裁者にでもなって」
そうしてというのだ。
「東京の結界を全て取り除いたなら」
「もう何が起こるかわからない」
「はい、保証出来ないです」
速水はまたこのことを話した、咲に語るその目は真剣そのものであり余裕のある顔でも彼が嘘を言っているつもりでないことは咲にもわかった。
「何が起こっても」
「どんな災害が襲ってきても」
「東京程災害に襲われる街はないので」
だからだというのだ。
「もうその時はです」
「どういった災害が来てもですか」
「不思議ではないです」
「それは怖いですね」
「天海僧正もおそらくそのことがわかっていたので」
江戸に最初に結界を張っていった彼もというのだ。
「そうしたのでしょう」
「そうなんですね」
「多くの犠牲を出してもその都度復興してきた街でも」
これも江戸そして東京の歴史だ、何があろうとも復興しそれまで以上に栄えてきたのだ。
「それでもです」
「災害はないに越したことはないですね」
「まさに。そしえ結界がなくなれば」
「その時はですね」
「あらゆる魔がこの街を襲い」
「災害もですね」
「多いに起こります」
速水の言葉は真剣なものだった。
「まことに」
「そう思うと結界は本当に必要ですね」
「はい、ですから私は無神論はです」
「否定されていますか」
「あれ程恐ろしい考えはないと」
「お考えですか」
「私としましては」
こう話した。
「非常に強く思います、そうした意味でも」
「神仏を否定する無神論は」
「それに敬う対象がないと」
「自分を一番偉いと思ったりもですね」
「しますので」
だからだというのだ。
「尚更です」
「無神論は怖いですか」
「私としては。神仏は存在しているのです」
「間違いなく」
「存在を実証出来ずとも感じることは出来ますね」
「そう言われますと」
どうかとだ、咲は答えた。
「神社やお寺での神聖な気持ちですか」
「そして助からないところを助かったり」
「そんな時ってありますよね」
「偶然出会った人が大きく人生を変えてくれたり」
「人の出会いもですね」
「全てです」
まさにというのだ。
「神仏の配剤なのです」
「それを感じることですね」
「そうです、そこで人はわかります」
「奇跡を見て受けて」
「そうです、そもそも人間の力なぞたかが知れています」
何でもない、そうした言葉だった。
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