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イベリス

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第四十六話 夏服を着てその十

「冗談抜きでね、そこまでの存在もね」
「東京にはあって」
「怪異の話もとんでもないから」
「そうしたお仕事の人達もですか」
「いてもね」 
 それでもというのだ。
「おかしくないよ」
「東京はそうなんですね」
「幕府も持っていてね」
「維新からもですか」
「持っていてね」
 そうした仕事に就く者達もというのだ。
「それでね」
「魔を退治していますか」
「その可能性もあるよ、ただその実在を確かめることはね」
 このことはというと。
「まず無理だよ」
「表のことじゃないからですね」
「人知れずね」 
 そうしてというのだ。
「活動する人達だから」
「わからないですね」
「僕達ではね」
 どうしてもというのだ。
「わからないよ、若し見ても」
「それでもですね」
「それは影でね」
 そうしたものでというのだ。
「全体はね」
「見られないですね」
「そうだよ、間違って見たら口止めされるよ」
「口封じですか?」
「流石にそれはないだろうね、ただ自分が気付かないうちに」
 その間にというのだ。
「見たという記憶をね」
「消されてますか」
「そうなってるだろうね」
「魔を退治する術で、ですか」
「そうなっているだろうね」
「魔を退治するならですね」
「そう、それ位のことはね」
 自分達を見た者を相手が気付かないうちに見たというその記憶を消してしまうということはというのだ。
「簡単にね」
「出来ますか」
「だからね」
 それでというのだ。
「わからないと思うよ」
「そうですか」
「流石に見たら消すとかね」
 そうしたことはというのだ。
「悪の組織じゃないんだから」
「ないですね」
「それはね」
 流石にというのだ。
「幾ら何でもね」
「そこまではですね」
「ないだろうね」
「それはいいですね、記憶を消されても」
「生きていればね」
「いいですからね」
「東京と都民を護るのにね」 
 それなのにというのだ。
「見た人を消すのなら」
「本末転倒ですね」
「そんなことしたらね」
「だからそこまではしないですか」
「多分だけれどね」
「そこまではわからないですか」
「だって僕も見た訳じゃないし」
 部長は咲にさらに話した。
「今のお話だと見てもね」
「記憶を消されてますね」
「それでわかってないよ」
「そういうことですね」
「兎に角そうしたお仕事の人達は表の人達じゃないから」
「わからないですね」
「政府の組織で働いていても」
 それでもというのだ。
「特殊工作員みたいなものだから」
「公じゃないからですね」
「表向きはそうした役職でも」
「実はそうしたお仕事をしている」
「そんな風だと思うからね」
「漫画や小説だとそうした設定多いですね」
「実際もそうじゃないかなって思うからね」
 部長はかなり本気で考える顔で述べた。
「だからね」
「わからないんですね」
「ひょっとしたら僕達の傍にいるかもね」
「そうした人が」
「本当に若しかしたらだよ」
「そう言われたら」
 ふとだった、咲は。 
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