ハッピークローバー

「そうした能力はな」
「大抵の人には」
「そうそういるか、自分がこの世で一番偉いと思っている奴は」
「いないわね」
　一華もそれはと答えた。
「流石に」
「そして人は大抵はほんの少しでもな」
「反省したり謙虚だったり」
「人の話を聞くんだ、他人から見たらつもりでもな」　
　それでもというのだ。
「そうなんだ、だったらな」
「更正出来るのね」
「ろくでなしでもな」
「じゃあその人は」
「そんな能力もなかったんだ」
「だから更正しないでなのね」
「どうしようもない奴のままでな」
　それでというのだ。
「餓鬼になってな」
「行方不明ね」
「そうなっているだ、もう野垂れ死んでいても」
　そうした最悪の結末を迎えていてもというのだ。
「別にな」
「誰もなのね」
「どうでもいいってな」　
　その様にというのだ。
「思っているんだ」
「そこまで見捨てられているのね」
「助けた人達の場所から半分いなかったことになってる」
「それも凄いわね」
「そこまで嫌われているんだ」　
　それ故にというのだ。
「助けたのに後ろ足で砂かける様なことしたからな」
「犬みたいに」
「犬は賢いだろ」
　父は娘の今の言葉にすぐに訂正を入れた。
「そうだろ」
「そうね、それで感謝するわね」
「あんな感謝してくれる生きものいないだろ」
「人間以上ね」
「犬は馬鹿に出来ないぞ」
　絶対にというのだ。
「だからな」
「その人は犬じゃなくて」
「餓鬼なんだよ」
　そちらだというのだ。
「本当にな」
「餓鬼が後ろ足で砂かけたの」
「そうしたんだよ」
「そういうことね」
「だからな」
　それでというのだ。
「犬みたいとかはな」
「言わないことね」
「ああ、しかし本当に最低な奴だった」　
　父は苦い顔で述べた。
「何もかもがな」
「人を支えることもしないで」
「自分だけでふんぞり返っていてな」
「それで何も出来ない」
「そうした奴だったからな」　
　だからだというのだ。
「どうしようもなかった」
「よくそんな人になったわね」
「教育が悪かったんだろうな」
　父はこう一華に答えた。
「やっぱりな」
「教育？」
「親、特に母親が酷くてな」
「それでなの」
「徹底的に甘やかしてな」
　そうしてというのだ。