ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね(お試し版)
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十一話「新たな生活、わかったこと」
「では、メラゴースト君の実力もわかったことですし、本日から修行開始と行きましょうか」
告げる師匠の言葉に俺はよろしくお願いしますという代わりに深く頭を下げた。相変わらずメラメラとしか聞こえない言葉では意思疎通を図れない以上、意思はこうして動作で伝えるより他ない。
「ポップと同じと言うことですので、メラゴースト君には魔法使いとなってもらいます、そこで……」
俺が見守る中、言葉を溜めた師匠のしたことは腰から鞘付きの剣をはずすことだった。
「何を?」
と俺が疑問を口に出すよりも早く地面へ鞘の先端を当てると土を削って何か書き始め。
(まさか、破邪の呪文?)
原作で魔王の意思から主人公の身内であるモンスター達を開放する呪文を使うシーンを思い出した俺だが師匠が書き出しているのは五芒星の魔法陣ではなく、二重の丸を等間隔で分割したかのようなモノ。
(マホカトールじゃない?!)
魔王の意思とやらで俺が暴れ出したわけではないし、件の呪文を使うような状況ではない。だから、破邪の呪文の魔法陣でないことは納得がゆくが、目の前のモノが何かと聞かれたら俺には答えられず。
「さて、こんなところでしょう。これは魔法の儀式、いわゆる呪文契約用の陣です。人はこの陣の中で魔法の儀式を行い呪文との契約をします。こうして契約に成功すれば呪文で魔法を呼び出す、つまり呪文が使えるようになる訳です」
説明されて俺はああそう言えばとこの世界での呪文の扱いを思い出した。
「昨晩見た限りあなたはメラの呪文しか使えないようでしたので、まずこの儀式から始めて見ましょう。使える呪文が増えれば、出来ることも増えます」
言っていることはごもっともだが。
(問題は俺の精神力だよなぁ)
ナンバリングによっての差異とかあるかもしれないが、メラの呪文は精神力を数値で表記すると2、消費する。今の俺は二発は撃てても三発目は無理の様だから、精神力の最大値は4か5と推測される。
(最下級の攻撃呪文だと一番消費が多い広範囲を薙ぎ払える爆裂呪文が5だったっけ。勇者専用とか言われてる雷撃系はそもそも除外するとしてだけど)
4だとするなら一番消費の多いモノとはいえ最下級呪文すら使えない残念っぷりである。
「では、準備はいいですか? 最初にあなたに契約してもらう呪文はメラミ。メラの上位呪文で三つの火球が結うように交差しつつ飛び、命中した標的を焼く呪文です」
勿論ですと答えるも、メララとしか師匠には聞こえて居ないだろう。だがそんなことはどうでもいい。漸くメラ以外の呪文も使えるかもしれないのだ。
(何が契約できるんだろう? このメラミを含めてメラ系統は大丈夫だと思うけど、魔法使い、魔法使いかぁ)
ワクワクしつつ魔法陣に入り、呪文が使いたいと念じながら意識を集中してゆく。
「ほうほう、さっそく契約出来たみたいですね。グッドです」
お褒めの言葉を頂けたが、この呪文との契約って他者からは何の呪文と契約できたかはわからないのだろうか。
(試してみようかな、試すだけならタダだろうし)
原作に出てこなかった他のドラクエ作品の呪文も契約は可能なのでは、ふいにそんな欲が頭をもたげ。
(原作では最上級とされた極大呪文、その一つ上のランクの呪文とか――)
今の俺では精神力的に扱えない。だが、これからの成長次第ではひょっとしてひょっとするのではとも思い。
「陣がまた?」
結果を先に言うなら、契約できた呪文は俺の想像をはるかに超えていた。師匠が幾度か驚きの声を上げるくらいには。
(けど、魔法使いになるって認識が最初にあったからかなぁ)
回復呪文は基礎中の基礎であるホイミの呪文すら契約できず、真空の刃で敵を切り刻むバギ系統の呪文も契約に失敗し。
「それはそれとして、ちょっと強いメラゴーストかと思えば、あなたも規格外ですねぇ」
えっと振り向く俺に師匠は説明する。陣は本来契約する呪文ごとに異なるのだと。
「私は『まずこの儀式から始めて見ましょう』と言いましたね?」
俺はワクワクして聞き逃していたようだけれど、つまり本来なら陣を書き換えて契約を行わなければいけなかったのだろう。
(それで僧侶系の呪文と契約できなかった……って訳ないだろ!)
一つの陣で何の呪文とでも契約できるという思い込みが常識を取っ払ったのか。何がどうしてこうなったのかはわからない。
(契約、ちゃんとできてるよな?)
今更ながらに不安になるが、確認しようにも精神力が足りなくて試せない。
(それでも、使える呪文が増やせることが解かったって言うのは収穫かな)
後で調べてみないといけないこととかが増えはしたが、呪文契約についてはおおむね満足のいく結果が残り。
「ところで、何故メラ以外の呪文について知っているのですか?」
師匠に問われて、俺は大きなポカをやらかしたことにようやく気づいた。メラミはアバンが説明してくれたからいい。だが、言われてみれば師匠の問いはもっともなモノであった。
「調子に乗るとロクなことにならない」
一つの真理を俺は今知ったのだった。
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