ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね(お試し版)
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番外1「感傷(勇者アバン視点)」
「ポップには悪いことをしましたねぇ」
こちらに背を向けて横になる弟子の背を眺めて私は呟く。弟子入りを申し出てきたメラゴースト君と再会したここは、元々野営の為に火を熾した場所。一人同行者が増えたとはいっても、予定を変更する理由には及びませんでしたし、ポップも修行をしつつ森の中を歩いてきたのですから、疲れて居る筈。
(睡眠時間を削っては行軍のペースも落ちてしまいますし)
修行に身が入らなくなっては元も子もありません。
「しかし」
不死族ですかと声には出さず言葉を続ける。命がけで私に弟子入りを望んだ彼は、今熾した火の側でゆらゆらと揺れつつ火の番をしている。
(これも何かの縁と言うことでしょうかね)
不意に思い出すのは、あの日地底魔城で戦った一人のモンスター。あのモンスターもまた種族こそ違えど不死族のモンスターでした。地底魔城の門を守っていたその魔物は首から子供が作ったと思われる首飾りを下げていた。
「……ワシの……負けだ……力だけじゃなく心においても……!!」
家族がいるのではと考えたら斬れなくなったと話す私に、膝をついたその魔物は願った。
「……勇者どの! 恥をしのんでお願い申す……!!」
託されたのはその魔物の養い子、拾い息子として育てていたというヒュンケルと言う名の人間の子供。
(強く正しい戦士に育て上げて欲しい、その願いを私は――)
果たすことができなかった。いえ、結論を出すのはまだ早いかもしれませんが。
「ま……待ちなさいっ!! ヒュンケル!!!」
「うおおおおお――――――ッ!!」
あの日、託された子を弟子として育てていた私は、制止も聞かず父の敵と剣で突きかかってきたその子を反射的に鞘付きの剣で打ち払ってしまった。
「ああっ!! ヒュンケルッ!!」
声を上げた時にはヒュンケルの身体は崖から川に落ち視界に映るのは水柱の名残のみ。
(生きているのか、今どこに居るのか)
名を呼びながら周囲を探し回りましたが、その時を境に彼の行方は知れず。
(「命がけの弟子入りともなれば、突っぱねるのは無情が過ぎるでしょう」などと言いましたが、結局のところあの時のことを負い目に感じた私の代償行為以外のなにものでもなかったのでしょうね)
我ながら度し難い、そう思います。果たせずにいる願いの代わりにという気持ちが一欠けらもなかったとは言えないのだから。無論、引き受けた以上あのメラゴースト君は正義を守り悪を砕く平和の使徒として立派に育て上げるつもりで、そこに嘘はありません、嘘はありませんが。
「すみませんね、貴方も感傷に付き合わせてしまったのかもしれない」
聞こえぬ程度の音量で私はこちらに背を向ける新たな弟子へ密かに詫びたのだった。
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