ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね(お試し版)
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八話「命がけの接触」
「はぁ、はぁ……あ」
しばらく走った俺は前方に光点を見つけて思わず声を上げた。
「何かの明かり……」
俺と言う存在が居る以上、野生のメラゴーストがあそこにもいるという可能性も否定できないが、進行方向からすればそれは勇者達の去った方向。あの二人が火を熾して休息している可能性だってある。
「いや、野営するなら普通暗くなる前にするもんだと思うし」
たき火のフリの粗を指摘されたお返しと言う訳ではない、だがあの二人がたき火をしてるとしたら不自然に思える点があって。
「それでも、行くしかないんだよな」
何度か見つけた足跡を今後も見つけられるとは限らない。加えて見つけられない内に進行方向を変えられたら見失ってしまうことだってありうるのだ。
「問題はどうやって近づくかだけど、姿を隠してゆくのは下策だな」
暗闇では問答無用に目立つボディだから隠れるということ自体難しいのもあるが、気取られないようにして近づいては奇襲するためと思われたって仕方ない。
「はぁ、なら」
導き出した結論は、堂々と敢えて姿は隠さずゆっくり近づいてゆくというもの。
「向こうがこっちに気づいたら、その場で土下座」
いくらなんでも攻撃の意思がないどころか頭を下げてるぼっち雑魚モンスターへ、いきなり攻撃してくることはないと思いたい。
「正直、出来るものなら今すぐ回れ右して帰りたい気分でいっぱいだけど」
一番難易度の低い生き延びられる方法に繋がるのがこれなのだ。送り出してくれた俺達への手前もある、成果なしで帰る訳にもいかなかった。
「モンスター?! けどこの距離なら――」
にも関わらず、たき火の側に人影があるなと確認できるところまで近づいたところで、小柄な方の人影が立ち上がってなにか取りだした。
「ちょ」
俺と言うモンスターがこれ見よがしに近づいてきてるのだ、間違ってはいない。声を聞いてやっぱりあの二人だったと確信はするものの全力で喜べない状況に、俺は急いで地に伏せようとし。
「ポップ、待ってください」
小柄な人影の方の呪文が完成するよりはやく、かけられた制止の声を土下座に移行する途中の状態で聞いた俺は密かに胸をなで下ろす。良かった、問答無用に呪文で消滅ルートは避けられそうだ。
「先生、どうして止め」
「あの魔物、こちらに殺気とか敵意を向けていません」
不満げな様子の小柄な影ことポップに大きい方の影が止めた理由を口にし。
「それに、先ほどたき火に化けて居たときも襲ってきませんでしたし」
「えっ、あのたき火が、アイツ?!」
続けた説明にポップが驚きの声を上げる一方で、ああやっぱりバレてたんだと俺は空を仰ぎたくなった。
「それでもついてきたということは、何かベリー深い理由でもあるんでしょう」
「深い理由、ねぇ」
ポップの声は明らかに疑ってる様子であったが、勝負に出るならここしかない。俺は顔をゆっくり上げると仲間になりたそうに二つの人影の方を見た。何かしゃべってもメラメラ言ってるようにしか受け取られないっぽい俺にできるのはこれぐらいだ。
(ジェスチャーしようとして攻撃の前動作って誤解されたら目も当てられないし)
あとは、こうして二人の出方を窺うのみ。
「先生、アイツじっとこっちを見てきてるんですけど」
「ふーむ、何か訴えたいけれど人の言葉は話せないとかそういうところでしょうかねぇ……でしたら」
そう前置きしてから、大きい方の人影つまり勇者アバンは俺に向かって歩き出す。
「先生?!」
「大丈夫ですよ、ポップ。相変わらず敵意はありません。さて、言葉は話せないようですが、では私達の言っていることは理解できますか?」
掛けられた問いに俺の反応は少し遅れたと思う。だが、きっと仕方ない。ようやく同行交渉のとっかかりまでこぎつけたのだ。
「おや、わからないのですか?」
「っ」
それで訝しがられてミスに気付いた俺は慌てて頷き。
「おっと、大丈夫の様ですね。では――」
俺がしゃべれないが故にアバンの質問は暫く続いたのだった。
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