お骨
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第三章
「ですから」
「いいことよ、あのお骨はね」
「神谷さんのご主人で」
「本当に六十年以上ね」
それだけの歳月をというのだ。
「一緒にいた人でね」
「掛け替えのない人ですね」
「私達がこれまで生きたより長く生きてきたから」
その六十年以上もの間というのだ。
「だからね」
「絆も深いですね」
「もう自分自身みたいだって言われていたでしょ」
「はい」
「その通りでね」
まさにというのだ。
「だからなのよ」
「ずっとあそこに置いていて」
「それで一緒におられるから」
「私達はですね」
「その気持ちを受け取ってね」
そうしてというのだ。
「大事にしないと駄目よ」
「お骨とそこにあるものを」
「そうよ、ただの骨じゃないのよ」
あのお骨はというのだ。
「決してね」
「神谷さんにとっては自分自身に等しい」
「掛け替えのないね」
「そうしたものですね」
「だからね」
それ故にというのだ。
「またお邪魔させてもらったら」
「あらためてですね」
「そうよ、奇麗にさせてもらって」
「お骨もですね」
「大事に扱わせてもらうのよ」
「神谷さんにとって自分自身と言っていい位のものなので」
「だからね」
その為にというのだ。
「そうしましょう」
「絶対にですね」
「ご主人だからね」
「そうですよね」
「人は亡くなってもお骨や遺品に心が残っているから」
「魂がですね」
「そして思い出もね」
残った者達のそれもというのだ。
「だからこそね」
「大切にするものですね」
「ずっとね」
こう言ってであった。
この日は会社に戻りそこで仕事をした、果林にとっては非常に大切なことを学んだ一日であった。
お骨 完
2022・3・28
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