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娘をやらんと言うと

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第一章

                娘をやらんと言うと
 尾崎房一はこの時自分の目の前にいるひょろながく青白い顔をした小さな丸い目と薄い唇に細面で七三分けのスーツ姿の青年に問うた、二人は今尾崎の家で卓を挟んでそのうえで共に正座をして向かい合っている。そこそこの大学を出てそこそこの企業で部長をしていて趣味の柔道は五段の腕である。趣味はその柔道と酒である。酒は焼酎だ。
「有紀子とだな」
「はい、結婚したいんですが」
 青年、泉進一と名乗る彼はおどおどした小さな声で答えた。
「それでこの度」
「見るからに弱そうだな」
 尾崎は青年に言った、尾崎は大柄で筋肉質で厳めしい顔である、全体的に資格久米野光も強い。角刈りも着物も強そうな印象を与える。
「そんなので娘を守れるのか」
「ちょっとお父さん」
 青年の隣にいる娘の麗奈が言ってきた、眉は黒く沢庵の形をしており色白で大きな優しい感じの目である。赤く大きめの唇と形のいい鼻と耳で黒髪をセミロングにしている。背は一五六程で楚々としてた外見である。一人娘である。
「そんなこと言ったら」
「そうよ」 
 優しい顔立ちでやや細い垂れ目で色白でピンクの優しい感じの口元で年齢を感じさせない奇麗な黒髪と娘とほぼ同じ背丈とスタイルの妻の由依も言って来た。
「折角麗奈が連れて来てくれたのに」
「そんなこと言わないでよ」
「そうよ、結婚したいって言うのに」
「結婚するということは娘を守るということだ」 
 尾崎は妻と娘に強い声で言い返した。
「だからだ」
「それでなの」
「そう言うの」
「そうだ、娘の暮らしを守れるか」
「あの、お父さん」
 麗奈は父の今の言葉に言ってきた。
「進一さん都庁の課長さんよ」
「何っ、二十代でか」
「ええ、そうよ」
「つまり都庁のキャリアか」
「そうなるわ」
「そうなのか」
「筑波大学を首席で出てね」
 そうしてというのだ。
「都庁に入ったのよ」
「大学はそちらか」
「そうよ」
「そうか、暮らしは保証出来るか」
「頑張ります」 
 泉は誠実な声で言ってきた。
「娘さんに生活で苦労はさせません」
「公務員だしな」
「任せて下さい」
「そうか、しかし弱そうだな」 
 尾崎は泉のそのひょろ長い外見を見てまた言った。 
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