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イベリス

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第四十五話 考えは変わるものその十二

「もうそれで終わりだ」
「溺れたらなの」
「ああ、そんな人もいるけれどな」
「ギャンブルとか麻薬に溺れる人が」
「お酒でもな」
 これでもというのだ。
「あと本当に育児放棄までしてな」
「遊ぶ人いるのね」
「知ってる人の母親が酷かったんだ」
「どんな人だったの?」
「親戚に子育て任せてな」
 自分の子供達のそれをというのだ。
「自分は遊んでばかりで家庭訪問で子供さんの担任の人で子供さんは養子ですかと真顔で聞かれたんだ」
「それって」
「わかるな、咲も」
「ええ、もう子育てしないから」
 咲は考える顔で返した。
「それでよね」
「先生から見てな」
「実の子に思えなかったのね」
「それでだ」
 そのせいでというのだ。
「そう言われたんだ」
「そこまで酷かったのね」
「手抜きばかりでな」
「それで自分は遊んでいたの」
「そんな遊びは駄目だ」
 絶対にというのだ。
「やるべきことをしないとな」
「そういうことね」
「こういうのが溺れているんだ」
「その人は遊びに溺れていたのね」
「それは死ぬまで治らなかったんだ」
「ずっと遊んでばかりだったの」
「碌に家事もしないでな、それでそこから何も学ばなくてだ」
 遊ぶことからというのだ。
「悪く言うと性悪の子供がそのままお婆さんになった」
「歳だけ取ったの」
「そんな人だった」
「それはまた酷いわね」
「大正生まれで尋常学校を出てからそうだった」
「もうずっと遊んでいたの」
「それで八十年近く生きたけれどな」
 それでもというのだ。
「そんな遊びばかりでな、あちこち出歩いてテレビ観てパチンコして買いものしてな」
「それだけで」
「もうそのままだった」
 亡くなるまでというのだ。
「本も読まないしまともな人とも話さない」
「パチンコしながらの与太話ね」
「それでどうなるか」
「人間として成長しなくて」
「もうな」
「子供のままだったのね」
「それも性悪な、な」
 そうした性質のというのだ。
「悪い部分は一切なおらなかった」
「何か酷い人生ね」
「最後は周りから誰もいなくなった、ヒステリーは起こすし自分しかなくて執念深くて底意地が悪くて図々しい人だった」
 父は咲にその人の性格も話した。
「不平不満ばかりで感謝しないで悪口しか言わなかった」
「うわ、最悪ね」
「溺れると成長しないのかもな」
 父はこうも言った。
「そうなったら」
「もうそれで終わりなの」
「遊びからも学べるけれどな」
「要は溺れないことね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「それが大事なんだろうな」
「それで私もなのね」
「気を付けてくれよ」
 娘の目をじっと見て言った。 
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