真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第19話 旅立ち
私は15歳を迎え、当初の予定通り旅に出ることにしました。
この旅で私の人生が決まるといっても過言ではありません。
この時点で有名になっている武将や軍師をスカウトするのは厳しいそうなので、未だ無名な人物を狙って行きます。
15歳の誕生日を迎える数ヶ月前に、両親から私の元に文が届きました。
文の内容は、旅の途中、山陽郡に必ず帰省するようにと書かれていました。
両親に言われるまでもなく、両親の元気な顔を見たかったので、そのつもりでした。
私の旅の同行者は、麗羽、猪々子、斗詩です。
麗羽はあれからも文武に励んで、名将とまではいきませんが、将としては十分な素養を身につけています。
多分、今の麗羽の能力は、恋姫の公孫賛と同程度だと思います。
麗羽も原作のような高飛車な態度がなくなり、家柄が低いからといって、見下すようなことは無くなりました。
私が時間を作って、街の子達と接する機会を幾度となく設けたのが良かったのでしょう。
『正宗様、何故、下々の者と付き合わねばなりませんの!』
麗羽は最初、街の子達と接することを嫌っていました。
しかし、自分より歳下の子供達の無邪気さに触れていくうちに、少しずつですが仲良くなっていきました。
今では街の子供達から「姉ちゃん」と呼ばれて慕われています。
そのことを麗羽も喜んでいるようでした。
麗羽は根は優しい子なので、切っ掛けさえあれば庶民と呼ばれる人々が同じ人間だと理解してくれると思っていました。
私はというと・・・。
いつのまにか麗羽と許嫁になってしまいました。
麗羽の叔父上で袁逢と名乗る人物が突然尋ねてきて、私のお爺々様に直談判をしてきました。
お爺々様は元々乗り気だったのか、袁逢殿の申し出を二つ返事で受けました。
その時の私の扱いは完全に空気でした。
普通は、当人である私に話すものじゃないですか?
許嫁の話が終わったかと思うと袁逢殿は、いきなり私の前に来ました。
『劉ヨウ殿、麗羽の事を頼みましたぞ!劉ヨウ殿のことは、毎日、麗羽から聞いております。麗羽が武術と勉学に励み出した時は、正直、驚きました。家庭教師を付けても意味が無かったあの子が・・・。劉ヨウ殿には、本当に感謝しております。これからは私以下、袁家の者を家族と思ってくだされ。おぉ、思えば、れ、麗羽は哀れな子なのです。小さくして、親と死別をしましてな。その麗羽が初めて好きな男の子がいると打ち明けられ、驚きました。しかし、う、嬉しかった!れ、麗羽には幸せに成って欲しいのです。り、劉ヨウ殿、れ、麗羽のこと、く、くくれぐれも宜しくお願いいたしまずぞ!』
袁逢殿は私の両肩をガシッと両手で押さえると、号泣しながら長々と麗羽のことを頼むと言ってきました。
あの時の袁逢殿の号泣姿に、私は引いてしまいました。
私はこれからもずっと麗羽と一緒に戦乱の世を生き抜くと誓ったのです。
あの時、袁逢殿に頼まれずとも、麗羽を守りたいという想いに変化などありません。
でも、あの時の袁逢殿の言葉で自覚を持つ事は出来た気がします。
袁逢殿は私と麗羽が旅に出る当日、態々見送りに来てくれました。
忙しい人なのに、麗羽のことがやっぱり心配なんですね。
それに比べ、私のお爺々様と姉上は・・・。
「蔵人達には、儂は元気じゃと伝えといてくれ」
「父上達に、元気でやっていると伝えといてね」
もう少し、旅に出る私に対していう言葉があるように思います。
「普通、かわいい孫や弟が旅に出るといったら心配するものじゃないですか」
私は溜め息混じりにお爺々様と姉上に言いました。
「正宗の強さは規格外じゃから、心配いらぬじゃろ。賊の方が逃げると思うぞい」
「私もお爺々様の意見に同感。正宗なら心配ないわね。心配なのは逆に麗羽よね。許嫁なんだから、ちゃんと守ってあげなさいね」
この2人の言葉に私は意気消沈してしまいした。
「劉ヨウ殿、麗羽のこと確と頼みましたぞ。これは些少ですが、路銀の足しにでもして下され」
袁逢殿は私にずっしり重い袋を渡してきました。
「こういう物は受け取れませんよ」
この重さからして、かなりの金額です。
流石に、こんな大金は受け取れません。
路銀なら、地道に山賊狩りでもして、稼げばいいと思っています。
その方が、その土地の情報も手に入れやすいでしょうから。
「な、なんと!私の金など、受け取れないというのですか!ひ、酷すぎますぞ!私は劉ヨウ殿と麗羽の旅の助けにと持参したのですぞ!」
袁逢殿は号泣しながら、私に顔を近づけてきます。
ちょ、ちょっと袁逢殿、顔が近いです!
「叔父様、正宗様が困ってらっしゃいますわ。正宗様もここは叔父さまの顔を立ててくださいませんか?」
麗羽が袁逢殿との間に入ってくれました。
ふーーー助かりました。
「・・・ああ。分かったよ。袁逢殿、有り難く頂戴いたします」
「おおっ、受け取ってくださいますか!ささ、どうぞ遠慮なく受け取ってくだされ」
袁逢殿は笑顔になり、私に餞別のお金を渡してきました。
「徒歩の旅はきついと思い、涼州産の馬の4頭用意しましたぞ。気に入ってくだされば嬉しいです」
袁逢殿は胸を叩いて、袁家の家人に馬を引かせてきました。
流石は、汝南袁氏といったところでしょうか・・・。
太っ腹ですね。
「わざわざ、涼州産の馬を用意していただかなくても普通の馬で十分でしたよ」
「何を仰せに成るか劉ヨウ殿!袁紹の夫になられる方にそこらの馬をお渡しできよう筈がございませんぞ。そんなことをしては、袁家の沽券に関わりますぞ」
まあ、歩きの旅は疲れると思ってたので、有り難くいただくとします。
「袁逢殿、お心遣い感謝します」
「なんのなんの、これしきのこと。無事旅を終えますことを祈っておりますぞ」
「アニキ、姫ー。早く行きましょうよ」
痺れを切らした猪々子が私と麗羽に声を掛けてきました。
「もうっ!文ちゃん、もう少し空気呼んでよ」
斗詩が猪々子に注意しています。
いつもの光景に今から本当に洛陽を立つのか疑ってしまいます。
「麗羽、そろそろ出発しようか」
私は気を取り直して、麗羽にいいました。
「そうですわね。猪々子さん、斗詩さん、出発しますわよ!」
麗羽は笑顔を私に向けて言うと、連れの二人組に声を掛けていました。
私達は見送りと別れを済ますと洛陽を出発しました。
後書き
とうとう旅立ちです。
旅立ちまで長かったです。
これからが人材探しの旅です。
主人公は陳留を迂回して、エン州入りをします。
陳留を通ると面倒なことが起こりそうなので・・・。
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