ドリトル先生とめでたい幽霊
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第十一幕その四
「魂は今もね」
「大阪にだね」
「おられるかもね」
「そうなんだね」
「そうも思うよ」
こう言うのでした、そしてです。
先生は晩ご飯ではです、ご飯を食べた後で日本酒を残った蛸のお刺身とお野菜と揚げを炒めたものを肴にして楽しみました。
その後で織田作さんの作品を文庫に集めたものを読みました、それはそれぞれの作家さんの作品をそれぞれそうしたものの中の一冊で。
いづも屋の入り口の絵が表紙にありました、その本を読んでです。
先生は翌朝朝ご飯の納豆ご飯に昨日の夜の残りをおかずを食べつつ言いました、蛸のお刺身は酢のものになっています。
「織田作さんおられるみたいだよ」
「えっ、そうなんだ」
「おられると思っていたけれど」
「実はそうなんだ」
「織田作さんは」
「昨日読んだ文庫本の最後の作者紹介みたいなページに書いてあったんだ」
そこにというのです。
「織田作さんが亡くなった後でね」
「その時になんだ」
「お話があったんだ」
「そうしたお話が」
「織田作さんの幽霊が馴染みの煙草屋でピロポンを買いに来たってね」
そうしたというのです。
「お話があるんだ」
「そうなんだ」
「織田作さんは亡くなったけれど」
「それでもなのね」
「織田作さんは大阪におられるんだ」
「そうかもね、嘘か本当かわからないけれど」
先生は昨日の残りのスープを飲みつつ皆にお話します。
「織田作さんは若くして亡くなっても」
「魂は大阪にあって」
「若しかして今もおられるんだ」
「大阪の街に」
「そうみたいだよ」
こう言ってでした、先生は思い出したお顔になって言いました。
「そういえば皆も擦れ違ったね」
「擦れ違った?」
「擦れ違ったっていうと」
「どの人?」
「そんな人沢山いるけれど」
「ほら、マントに着流しでね」
いぶかしむ皆にこの人のお話をしました。
「帽子を被った」
「ああ、あの人」
「王子も擦れ違った」
「それで先生もそうした」
「あの人ね」
「そう、あの人は」
先生は強い声で言いました。
「織田作さんの銅像だね」
「そうだね」
「言われてみればね」
「織田作さんだよ」
「あの銅像の織田作さんよ」
「そのままの服装だよ」
皆も言われてみればと頷きました。
「誰かって思ったら」
「あの織田作さんの銅像なんだ」
「織田作さんはやっぱり生きているんだ」
「魂は」
「身体はなくなっても」
「うん、身体はなくなってもね」
それでもとです、先生はそのお話もしました。
「魂は不滅だね」
「そうなんだよね」
「キリスト教でもそうだし」
「仏教でもだね」
「神道でもそうで」
「天理教でもね」
「多くの宗教がそう言っていてね」
それでというのです。
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