へそくりを隠す場所
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第二章
「現金でさ」
「置いておきたいの」
「そうしたら二人共五月蠅いからな」
その両親達がというのだ。
「現金じゃなくて銀行に貯金しとけって」
「そっちに振り込まれるからいいでしょ」
「だから俺はそれが嫌なんだよ」
「どうしても預金しておきたくないのね」
「俺はな、それでバイトで稼いだ金はな」
今精を出しているそれをというのだ。
「何処に置こうと考えてな」
「うちの子の部屋に隠してるの」
「小さい子だとお金見付けても何もしないしクローゼットの奥なんか探さないしな」
「それはそうね」
「だから置いてたんだよ」
稼いだ金をというのだ。
「へそくりをな」
「そういうことだったのね」
「ああ、そうだよ」
「全く。何かと思ったら」
「けれど見付かったしな」
「うちの子の部屋に隠すのは止めないさいよ」
加緒里は彦弥に咎める顔と声で告げた。
「いいわね」
「見付かったしな」
「というかへそくりも場所を選びなさい」
怒った声で言った、そうしてだった。
弟に隠していた金を全て持って行かせた、そしてどうしても現金を隠したいのなら金庫を買えと言った。
すると彦弥は実際に金庫を買ってそこに金を入れる様になった。全てが終わってから加緒里は夫の篤志穏やかな顔で眼鏡をかけた背が高く痩せていて黒髪をオールバックにしていて額の広さが目立つ彼に言った。
「全く、隠すにしてもよ」
「場所を考えないとね」
「お金にしてもね」
「そうだね、しかし現金で置いておくのはね」
「独特の考えね」
「銀行に預けたままにしないなんてね」
「あの子昔から大事なものは手元に置くから」
「それでかな」
「多分ね、けれどこれで一件落着よ」
加緒里はほっとした顔で言った。
「あの子も金庫買ってね」
「そちらにお金を置いているからだね」
「へそくりよりそっちの方がずっと安全だし」
「だからだね」
「これでよしよ、下手に隠すよりも」
「厳重な場所に保管した方がいいね」
「そうした方がずっといいのよ」
微笑んで言った、そうしてだった。
夫婦で子供のことを楽しく話した、剛志は今はすやすやと寝ている。夫婦でそんな我が子を見ながら優しい笑顔で話していった。
へそくりを隠す場所 完
2022・2・23
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