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へそくりを隠す場所

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第一章

                へそくりを隠す場所
 弟の三島彦弥を見てだ、結婚して名字が加隅になっている加緒里は怪しむ目で言った。黒髪を長く伸ばしセットしており吊った大きなはっきりした目と細く長い眉にきりっとした赤い唇である。やや面長で鼻は高く背は一六六程でモデル並のスタイルである。
「あんたよくうちに来るわね」
「そ、それが悪いのかよ」
「悪くないけれど時々うちの子の部屋に入ってるわね」
「おもちゃ好きだからだよ」
 彦弥は慌てた顔で応えた、金髪にしている神の毛を短くしていてやんちゃそうな顔で背は一七八位でやや太っている、大学生で今はアルバイトに精を出している。
「それでだよ」
「うちの子まだ三つだけれど」 
 小さな男の子、自分の息子の剛志を見て言った。夫の武明そっくりの顔である。
「ブロックに夢中の」
「そのブロックが好きなんだよ」
「本当に?」
「本当だよ」 
 必死の顔での返事だった。
「ずっと言ってるだろ」
「だったらいいけれどね」
「そうだよ」
「まあうちの子の部屋にあんたが取るものなんてないしね」
「人のものなんて取るかよ」
「あんたそういうことしないしね」
「そうだよ、そんな悪いことするか」 
 今度は怒って言った。
「俺は悪いことはしてもな」
「ものは取らないわね」
「それに子供も泣かさないからな」
「それもそうね」
「そうだよ」 
 兎に角必死に言う、姉も弟がものを取らないことはわかっているのでそれならいいかとした。確かに胡散臭く思っていたが。
 そんなある日のことだった。
 この日も彦弥が来ていたが加緒里は家の掃除をしていた、その時に。
 息子の部屋も掃除したがそこに彦弥がいて。
 部屋のクローゼットを開けて何かを入れていた、それを見てだった。
 加緒里は弟に眉を顰めさせて尋ねた。
「あんた何やってるの?」
「げっ、姉ちゃん」
 弟は姉の声に仰天した顔で応えた。
「いたの」
「いたかじゃないよ、何やってるのよ」
「いや、これは」
「これはじゃないわよ、何してるのよ」
「何って実は」
 弟は観念した様に話した、それはというと。
「へそくり?」
「そうなんだよ、家に置いてもな」
「お父さんとお母さんがなの」
「俺現金で置いておきたいけれどさ」
「預金じゃなくてなのね」
「銀行とか潰れたら終わりだろ」
 それでというのだ。 
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