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ドリトル先生とめでたい幽霊

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第十幕その十二

「根拠なくね」
「いや、どうしてそうなるの?」
「聞いてる限りじゃ最低だけれど」
「恩知らずで器が小さくて無神経で」
「そんな人の何が偉いの?」
「聞いていたら何もないし」
「自分を全く知らないからだよ」
 それ故にというのです。
「そして世の中もね」
「だからそう思えるんだ」
「自分が一番偉いって」
「そんな風に思えるんだ」
「そうだよ、本当にこんな人はね」
 どうにもというのです。
「救われないよ」
「そうなったら終わりだけれど」
「織田作さんでも書かなかった」
「何の愛嬌も見るところもない人は」
「落ち着く場所も見付からないんだ」
「周りに嫌われていられなくなって去り続けてね」 
 そうなってというのです。
「最後は今言った通りだよ」
「奈落ね」
「そこに落ちるよ」
「そうなるんだね」
「あまりにもどうしようもないと」
「そうした場所にも辿り着けなくて」
「落ちるだけだよ、そこまではね」
 流石にとです、先生は言いました。
「なったら駄目だね」
「全くだね」
「人間としてね」
「織田作さんの作品の人達も褒められた人は少ないけれど」
「もうそこまでいくとね」
「どうしようもないね」
「こうした人はずるいだけでね」
 それでというのです。
「悪い意味で要領はいいけれど」
「努力しないから」
「進歩しないし」
「しかも不平不満ばかりで」
「何もないしね」
「そう、偉そうにしていてもね」
 先生はそれでもと言うのでした。
「何もない人だから」
「それじゃあ何も出来ないよね」
「偉そうに言っても」
「実は何も出来ない」
「それで不平不満ばかりだとね」
「嫌われて」
「居場所なんてなくて奈落に落ちて」
 そうしてというのです。
「織田作さんの作品どころじゃないよ」
「そうなりたいね、僕達も」
「流石にね」
「やっぱり最後は救われたいね」
「何かあっても」
「僕もだよ、仮寝の宿にまで文句を言ったら」
 その時はといいますと。
「その仮寝の宿もなくすよ」
「そうなりたくないね」
「本当にそうね」
「そうなるよりもね」
「やっぱり落ち着きたいね」
「そうだね」
 先生もその通りだと頷きました、そのうえで善哉を楽しみました。その善哉には仮寝の宿の優しさがありました。 
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