美形で声もいいので

　　　　　　　　　　　　　　　　美形で声もいいので
　三島総一郎は細面ですっきりした顔立ちで大きめできらきらした黒目がちの目を持っている。眉は細く奇麗なカーブを描いていて口元は涼し気で鼻も高く形がいい。
　そして黒髪を奇麗なショートにしているが。
「残念だな」
「そうですね」
　街で彼をスカウトしようと思った芸能プロダクションの面々が街中を歩いている彼を置見て言った。
「顔はいいのに」
「スタイル自体もな」
「ええ、けれど」
「背がな」
「あれじゃあな」
「一六〇位ですね」
「小柄過ぎて俳優やモデルにはな」　
　向いていないとだ、こう言ってだった。
　彼等は総一郎に声をかけなかった、通っている大学でも彼は顔はいいが小柄であることを密かに言われていた。
　そんな彼に弟も勲矢一八〇近くあり太った茶色の癖のある髪と細い目と丸鼻の彼が言ってきた、兄は両親のそれぞれの特徴が出ているが彼は母方の祖父そっくりである。通っている高校では柔道部である。
「兄貴、この前芸能事務所に人達にスカウト見送られたんだよな」
「ああ、聞こえてたよ」
　総一郎は弟に憮然とした顔で応えた、家のリビングのテレビを使ってゲームをしている時に弟が来て声をかけてきたのだ。
「背が低いからってな」
「それは残念だな」
「俺も俳優さんになれるんだったらな」
「なりたいよな」
「モデルさんにもな。売れるのは大変でも」
　それでもというのだ。
「なりたいさ、けれど背のことはどうしようもないからな」
「だったら声優さんどうだよ」
　弟は兄にこう言った。
「実は男の人でも小柄な声優さんいるんだよ」
「そうなのか？」
「それも結構な、イベントとかには出ても」
「声の仕事だからか」
「別に背は関係ないしな、事務所の養成所とか入ってみたらどうだ？」
「考えてみるな」　
　弟にこう応えて声優という仕事に事務所それに養成所のことを調べた、それで親とも話して養成所に通う金はアルバイトで手に入れることにしてだった。
　彼は大学に通いつつこの業界の大手の一つアーツエンタープライズという事務所の養成所に入った、するとすぐにだった。