イベリス
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第四十四話 麦わら帽子を買いながらその七
「そうなるわね」
「そうよね」
咲もそれはと頷いた。
「授業でユダヤ教とか習ったけれど」
「それよ、理解出来た自分偉いってね」
その様にというのだ。
「選民思想を持たせる」
「そうした風もあるの」
「そう、それで吉本隆明もね」
彼の文章、主張もというのだ。
「凄いって思われて」
「それでなの」
「戦後最大の思想家とか言われていたのよ」
そうだったというのだ。
「ずっとね」
「そうだったのね」
「けれどその実はね」
それはというと。
「オウムの教祖を偉大とか言った」
「そんな人だったの」
「その辺りの子供ですらわかる位のね」
そこまでのというのだ。
「馬鹿だったのよ」
「そうだったの」
「そうよ」
咲に対して憮然として話した。
「どうしようもないね」
「あの、私どころか本当に子供でもね」
「あの教祖はおかしいわよね」
「どう見てもね」
「インチキよね」
「とんでもない奴じゃない」
こう言うのだった。
「お金に汚くて愛人さん何人もいたのよね」
「ええ、それで信者には粗末なもの食べさせてね」
オウム食という言葉もまた当時話題になった。
「自分はメロン食べてパーコー麺食べてステーキ食べてよ」
「メロン大好きだったのよね」
「そう、それでね」
そのうえでだったのだ。
「権力まで目指していたのよ」
「クーデター起こしてよね」
「だからテロやったのよ」
「邪魔と思った人殺して」
「そうした奴をね」
俗物と呼ぶにも生ぬるい天魔外道と言うべき輩をというのだ。
「偉大な宗教家とか最も浄土に近いとかね」
「もう並の馬鹿じゃないわね」
「それでそんな馬鹿がね」
「戦後最大の思想家だったの」
「そう言われていたのよ、けれどその文章は」
吉本のその文章はというのだ。
「何を言っているかわからない」
「そうしたものだったの」
「そう言われてるわ、読んでないけれどね」
「お姉ちゃん読んでないの」
「読む価値ないって確信してるからね」
それ故にというのだ。
「一切ね」
「読んでないのね」
「そう、それでね」
そのうえでというのだ。
「言ってるけれどオウムについての発言はね」
「知ってるの」
「対談は読んだからね」
「その対談で言ってたのね」
「それでこんな馬鹿いないって思ったけれど」
それでもというのだ。
「そんな馬鹿がね」
「戦後最大の思想家ね」
「そう言われていて」
そしてというのだ。
「持て囃されてたのよ」
「訳がわからないわね」
「だって戦争終わった後の日本の学者さんとか思想家の人ってね」
愛は今度は所謂知識人自体の話をした。
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