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ドリトル先生とめでたい幽霊

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第九幕その六

「やっぱり違うね」
「文壇っていうけれど」
「普通の文壇じゃないんだ」
「そこにいた人じゃないんだ」
「だからアウトローみたいにも言われていたんだ」 
 当時はというのです。
「太宰治や坂口安吾と同じでね」
「無頼派でしたね」
 トミーが言ってきました。
「確か」
「そうだよ」
「やっぱりそうですか」
「普通の純文学とはね」
「違っていたんですね」
「既存の文学に反発もしていたよ」
 織田作さん達はそうだったというのです。
「文壇にもね」
「そうでもあったんですか」
「終戦直後にそうしたんだ」
 その時にというのです。
「太宰治が志賀直哉を批判したことは知られているけれど」
「今お話の出た」
「日本の文学では有名な人だね」
「はい、太宰は」
 まさにとです、トミーは答えました。
「芥川龍之介と並ぶ」
「そこまでの人だね」
「僕も知っています」
「最近日本文学は海外でも知られているけれど」
「太宰もその中にいますね」
「うん、太宰は終戦直後の文壇を見てね」
 そうしてというのです。
「戦争が終わって急に言うことが変わったことに思って」
「志賀直哉を批判したんですか」
「それで如是我聞で書いたんだ」
「志賀直哉への批判をですか」
「そうなんだ、そして坂口安吾もそうしてね」
 この人もというのです。
「織田作さんもだったんだ」
「志賀直哉を批判していたんですか」
「うん、作風も全く違ったしね」
 そちらもというのです。
「織田作さんは普通の純文学とは違ったし」
「太宰治もですか」
「いや、太宰は当時からね」
「普通のですか」
「結構当時の純文学の中にあったよ」
「そうでしたか」
「あの人は終生芥川龍之介を深く敬愛していたからね」
 先程名前が出たこの人をというのです。
「だからね」
「それで、ですか」
「うん、作風や文章は太宰独自でも」
「芥川の作風に影響を受けていますか」
「その感じがあるとも言われているよ」
「そうだったんですか」
「それでね」
 その為にというのです。
「太宰はオーソドックスな純文学の中にね」
「あったんですね」
「けれど坂口安吾や織田作さんは違って」
「純文学とはですね」
「少し違った娯楽的な作品もね」
 そうした作品もというのです。
「あるんだ」
「そうですか」
「それが織田作さんでね」
「純文学の中にあっても」
「結構毛色が違うんだ」
「そういうことですね」
「それに当時の作家さんは殆ど東京に住んでいたけれど」
 先生はお家のお話もします。 
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