仮面ライダーAP
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第8話 戦乙女の剛拳
前書き
◆今話の登場ライダー
◆東方百合香/仮面ライダーアルビオン
元SATであり、シェードとの交戦経験もあるクールビューティー。仮面ライダーギガントのスーツを装着した後は、巨大な機械腕「ギガントアームズ」からパンチと共に衝撃波を叩き付ける「ギガントインパクト」を切り札に、接近戦主体で戦う。マシンGチェイサーに搭乗する。年齢は25歳。
※原案はMegapon先生。
◆熱海竜胆/仮面ライダーイグザード
警視庁の警部であり、愛する妻と娘達を守るためにノバシェード打倒に立ち上がったタフガイ。仮面ライダーイグザードに変身した後は、真上に蹴り上げた相手に追撃の回し蹴りを叩き込む「イグザードノヴァ」を切り札とする接近戦をメインに戦う。マシンGドロンに搭乗する。年齢は29歳。
※原案はカイン大佐先生。
◆静間悠輔/仮面ライダーオルタ
若手ながら優秀な警官であり、竜胆の片腕として彼のサポートに徹している。仮面ライダーオルタに変身した後は、エネルギーネットで拘束した相手に斬撃を叩き込む「レイスラッシュ」を切り札としつつ、近接戦と射撃戦を臨機応変に切り替えて戦う。マシンGチェイサーに搭乗する。年齢は21歳。
※原案はシズマ先生。
「なんだァ? 禍継の奴、あんな人間共に負けちまったのかよ。『仮面ライダー』にやられちまうってんならともかく、生身の連中相手に何やってんだかなァ……」
武田禍継の敗北。その瞬間を遥か遠方から目撃していた上杉蛮児ことシルバーフィロキセラは、深々とため息をついていた。まさか自身と双璧を成す幹部の一角が、人間達に敗れるとは夢にも思わなかったのだ。
そんな彼も、警察製の外骨格を纏う「仮面ライダー」と交戦中なのだが。対戦相手である仮面戦士の方には視線すら向けず、蠅を払うような感覚で触手を振るい続けている。
「私など眼中にない、とでも言うのか……!」
黒のアンダースーツに、下半身を彩る白と金の差し色。上半身を固める、黒を基調としつつもメタリックブルーの差し色が入った装甲。それらは「仮面ライダーイクサ」のバーストモードや、「仮面ライダーG3-X」を彷彿とさせている。
そんな外観を持つ「仮面ライダーアルビオン」のスーツを纏う東方百合香は、両腕に装備されている巨大な機械腕「ギガントアームズ」を盾にして、ひたすら防御に徹していた。
ピーカブースタイルで触手の乱打を凌いでいる彼女の背後には、真っ二つに切り裂かれた彼女のGチェイサーの残骸が転がっている。その無惨な姿が、シルバーフィロキセラの触手に秘められた威力を物語っていた。
広範囲に伸びる彼の触手なら、ただ適当に振り回しているだけでもかなりの脅威となる。故に彼はアルビオンを視界にも入れないまま、彼女を圧倒しているのだ。
「だがッ……その傲慢さが命取りになるッ!」
無論、このまま何も出来ずに倒れる彼女ではない。防御体勢のまま徐々に間合いを詰めていた彼女は、触手の打撃を凌ぐと「次」が来るまでの僅かなインターバルを狙い、一気に動き出して行く。
ギガントアームズに内蔵されている機関砲「ギガントガトリング」が火を噴いたのは、その直後だった。大量のエネルギー弾を連射する彼女の奇襲攻撃が、油断し切っていたシルバーフィロキセラの横顔に炸裂する。
「んぐぉッ!? て、てめッ……!」
「私の動きを注視してさえいれば、容易く避けられたかも知れんなッ!」
彼がアルビオンの接近に気付いた時にはすでに、巨大な機械腕から放たれる必殺の一撃が決まろうとしていた。
ギガントアームズ内部のシリンダー状パーツ「インパクトパイル」が、吸引された空気を最大限にまで圧縮している。
「はぁあぁあーッ!」
やがて、パンチと共に急速に打ち出された衝撃波は、シルバーフィロキセラの身体を激しく吹き飛ばしてしまうのだった。
「ぐおあぁああッ!?」
あまりの威力に、白銀のボディに亀裂が入ると。シルバーフィロキセラはその激痛にのたうちまわり、転倒してしまう。
――アルビオン自身が言っていたように。いわゆる「パイルバンカーパンチ」とも言える、彼女の必殺技「ギガントインパクト」は高い威力を誇る一方で、非常に大振りな技でもある。シルバーフィロキセラが一瞬でもアルビオンに目を向けていれば、確実に回避出来ていただろう。
仮面ライダーの真似事をしているだけの人間共など、警戒する必要はない。そんな油断が招いた失態なのだ。
「はぁ、はぁッ……み、見たかノバシェードめ……!?」
だが。この一撃だけで仕留め切れるほど、「ヤワ」な存在ではないことも事実であった。
逆転の一撃を決め、息を荒げながらも勝利を確信していたアルビオンの前で。シルバーフィロキセラは呻き声を上げながらも、すぐに立ち上がって来たのである。
「……やってくれるじゃねぇか。てめぇの鎧をひん剥いたら、死ぬまで可愛がってやるから覚悟しろよ」
「くッ……!」
侮っていた相手に一杯食わされた、という屈辱感がさらなる怒りを煽ったのか。シルバーフィロキセラは凶悪な憤怒を帯びた眼で、アルビオンを射抜いていた。
先ほどのようなチャンスなど、もう与えない。ひ弱な女に生まれたことを後悔するほど、痛め付けてやると。
「……! なんだァ、あいつら……」
そんな彼の凶眼と真正面から向かい合うアルビオンが、決死の覚悟でギガントアームズを構えた瞬間。遠方から猛進してくるGドロンとGチェイサーに気付いたシルバーフィロキセラが、忌々しげに視線を移す。
「東方、無事か!? ……妻と娘の誕生日だと言うのに、ふざけた真似しやがって。今日ばかりは容赦せんぞ、ノバシェードッ!」
「警部、それは私情というものです。……第一、あなたはいつも容赦していないでしょう」
Gドロンを駆る熱海竜胆警部と、その補佐を務めている静間悠輔。2人はそれぞれの愛車から颯爽と飛び降りると、素早くアルビオンを庇うように立つ。
その2人の腰にはすでに、「変身ベルト」が巻かれていた。
「熱海警部、静間君……!」
「怪我はないようだな、東方。……後は任せておけ。静間、変身だ!」
「……了解」
竜胆が装着している「イグザードドライバー」に「ギアカード」と呼ばれるカードが挿入されると、歯車が噛み合った様な金属音が響き渡る。
悠輔も自身のベルト型デバイス「オルタギアα」に腕時計型デバイス「オルタギアβ」を翳していた。
「変身ッ!」
「……変身」
やがて、両者の音声がスイッチとなり「変身」が始まると。装着者の身体に沿った基礎の骨格「アーマーフレーム」が形成され、そこからベルトに内蔵された「アーマー」が展開されていく。
アルビオンの前に、2人の仮面ライダーが顕現したのはそれから間もなくのことであった。
「熱海警部、私は、まだ戦えますッ……!」
「ギガントインパクトを使ったんだろう? アレの反動は生半可じゃないんだ、お前はしばらく休んでいろ。……残りの仕事は、俺達で引き受けてやる。静間、行くぞ」
「仮面ライダープライムローグ」を想起させる外観と紅い装甲を兼ね備えている、熱海竜胆こと「仮面ライダーイグザード」は、黒いマントを荘厳に翻している。
「……えぇ。警部の言う通り、東方さんは一旦下がってください」
「その気持ちはありがたいが……奴は今度こそ、本気で私達を仕留める気なんだぞ! あれほど警戒されては、もうギガントインパクトは決められない……!」
「大丈夫です。……俺達も、伊達にこのスーツのテストを任されてきたわけではありません。それ以外にも打つ手はあると、証明して見せます」
「静間君……」
ダークブルーのボディスーツに、各所に金の模様が入った黒いレアメタル製のプロテクター。V字のアンテナを備えたフルフェイスのヘルメットに、左腕に装備された銀色のガントレット。
そんな「オルタナティブ」を彷彿させる外見を持つ、静間悠輔こと「仮面ライダーオルタ」も。「X」の字を模した専用装備「エクスブレイガン」を携え、静かな闘志を燃やしていた。
「……いいぜぇ、じゃんじゃん来な。いたぶれる玩具が増えると思えば、それほど悪くもねぇ話だ」
「東方のギガントインパクトを受けても、お前は何も学んでいないようだな。……生身だと思って、侮っていい相手ではないんだぞ」
「……俺達、『新世代』の仮面ライダーはな」
ボディに走る亀裂も厭わず、薄ら笑いを浮かべて触手を振り回すシルバーフィロキセラ。そんな彼と真っ向から向き合うイグザードとオルタは、勇ましく臨戦体勢に入っていた。
これからの時代を守り抜いていく、「新世代」の仮面ライダー。その存在意義を賭けて。
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