仮面ライダーAP
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第3話 紛い物と贋作
「……ようやく変身してくれましたか。これでようやく、少しはまともな殺し合いになりそうです」
「殺し合い……か。やっぱり、あなた達にとってはそれしかないのね」
遥花ことライダーマンGの勇姿を前に、3人の怪人達もようやく全力で戦えそうだ、と言わんばかりに触手を揺らしている。
ライダーマンGも勇ましげに、ハサミ状の右腕「パワーアーム」を構えているのだが。彼女が変身してもなお、形勢は圧倒的に不利なままであった。
突然変異という不安定な条件下で誕生した亜種とは言え、3体のフィロキセラ怪人はいずれも、シェード製の改造人間にも匹敵し得るスペックを備えている。対してライダーマンGは改造人間としては極めて不完全であり、女性の膂力では単身で怪人1体を仕留め切るのも難しい。
これまで対戦してきたノバシェードの怪人達は、シェード製には遠く及ばない劣化品ばかりだったから、ライダーマンGの戦闘力でも辛うじて対処出来ていたのだ。かつての織田大道やドゥルジのような、一線級の怪人にも引けを取らないこの亜種達と真っ向から戦っても、勝ち目などないのである。
(それでも……それでも、私は……!)
それを肌感覚で理解した上で。ライダーマンGは臆することなく、この3体に立ち向かおうとしているのだ。
仮面ライダーG。仮面ライダーAP。シェードを倒し、その脅威から世界を救った彼らはもう、この世界には居ない。それでも彼らが残したこの平和だけは、救われた者達の1人として、守り抜きたい。
その想いが、右腕の力を捨て切れなかった番場遥花の背を、突き動かしているのである。
「安心してください、番場遥花。無駄な抵抗さえしなければ、花を労るように優しく殺して――!?」
そんな彼女の闘志を汲むゴールドフィロキセラが、一瞬で決着を付けようと触手を尖らせた――その時だった。
「……! あ、あれって、お父さんの……!?」
遥か遠方から砂埃を巻き上げ、こちらに向かって猛進して来る「増援」。その影に気づいたライダーマンGと怪人達が、同時に足を止める。
ライダーマンGはその「増援」の正体に気付き、思わず声を上げていた。
――遥花の父にして、現在の警視総監である番場惣太。愛娘が「仮面ライダー」の代わりとしてノバシェードのテロに立ち向かっている中で、彼はとある計画を進めていた。
仮面ライダーG。仮面ライダーAP。シェードの怪人達に敢然と立ち向かい、人類の自由と平和を守り抜いた正義の戦士達。
彼らの力を強化外骨格の技術によって再現し、令和という新時代を守る「新たな仮面ライダー」を造り出す。その計画の「試作機」を持つ者達が今、この戦場に駆け付けているのだ。
遥花が事前に聞いた話では、正式なロールアウトは来月だったはず。にも拘らず彼らは、Gチェイサーと同じ警察用のスーパーマシンを駆り、ライダーマンGの前に現れようとしている。
ノバシェードのトップ3が東京に現れたという通報を受けた遥花が、罠の可能性を承知で飛び出したことを知った惣太は、彼らに緊急出動命令を発していたのだ。
「あれは……警察が開発を進めているという『贋作』ですか。改造人間ですらない、鎧を着ているだけの人間如きが『仮面ライダー』を騙るとは……なんと嘆かわしい」
「見てるだけでムカっ腹が立つ野郎共だぜ……! ライダーマンGより先に、奴らから始末してらァッ! なぁ天峯、いいよなァ!?」
「賛成だな。……俺としても、奴らの存在には虫唾が走る。先に奴らから仕留めさせて貰うぞ、天峯」
遥花が乗ってきたものと同じ系統のスーパーマシン。それらに乗っている彼らの接近を目の当たりにした怪人達は、揃って忌々しげな声を漏らしている。
強化外骨格を纏う生粋の人間でありながら、改造人間にも迫る性能を実現していると噂されている彼らの存在は、怪人達のアイデンティティを著しく脅かしているのだ。
より強い憎悪と殺意を滾らせているシルバーフィロキセラとブロンズフィロキセラは、ライダーマンG以上に許し難い存在である「増援」達の方へと向かっていく。
残されたゴールドフィロキセラは、ライダーマンGから視線を外すことなく、真っ向から彼女と睨み合っていた。
「やれやれ……蛮児も禍継も、勝手な行動ばかりで困ったものです。ま、いいでしょう。仮面ライダーの『紛い物』も『贋作』も今日を以て滅び去り、ノバシェードはその雷名を世に轟かせる。そのシナリオには、何の変更もないのですから」
「そうはさせない……! そんなシナリオ、私達が書き換えてみせるッ!」
ノバシェードの打倒。その決意を胸に集まった、ライダーマンGをはじめとする新世代の仮面戦士達。
彼らとノバシェードの全面戦争の火蓋が今、切って落とされる――。
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