イベリス
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第四十三話 麦わら帽子その九
「一緒に遊んでお話して」
「それが経験になるの」
「そうして何度も合コンに参加して」
「経験を積んだら」
「もう男の子のこともわかるし」
それでというのだ。
「そこでね」
「これはという子になの」
「アタックしてよ」
「自分から彼氏にするのね」
「そうよ、まあ振られてもね」
それでもというのだ。
「それはそれでね」
「振られてもいいの?」
「それも経験のうちよ、失恋もね」
「経験のうちなの」
「そうした気持ちでね」
それでというのだ。
「やっていったらね」
「いいの」
「そう、ただね」
「ただ?」
「人の失恋は言うな」
咲にこのことは強い声で話した。
「それはね」
「したら駄目ってことね」
「軽い気持ちでからかっても」
自分ではそのつもりでもというのだ。
「言われた方は心の傷になっているから」
「それを抉るとなると」
「もうね」
それこそというのだ。
「一生怨まれるわよ」
「一生ね」
「自分が忘れていてもね」
「軽い気持ちで言ったらそうよね」
「けれど相手はね」
言われた方はというのだ。
「もうね」
「覚えていて」
「一生怨んでいるから」
だからだというのだ。
「言わない方がいいわ」
「怨まれていいことないしね」
「どんな相手にもね」
「そうよね」
「いじめだってね」
こちらでもというのだ。
「いじめた方はあっさり忘れていても」
「いじめられた方は覚えていて」
「それで怨んでいてね」
「何かあったら」
「その時はね」
まさにというのだ。
「仕返しされるわよ」
「そうなるわね」
「思わぬところでね」
「やられるのね」
「卑劣な人だったら最初は笑っていて」
そうした状況でというのだ。
「背中からね」
「撃ってきたりとか」
「そうしてくるから」
だからだというのだ。
「いじめだってね」
「しないことね」
「そして人の失恋もね」
これもというのだ。
「絶対にね」
「言わないことね」
「こんなことで一生怨まれるなんてね」
「馬鹿なことよね」
「一生怨まれること自体がね」
このこと自体がというのだ。
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