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飲み合い

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第三章

 オウロッシュは実際に周りの者達と一緒にこの勝負を見守った、二人は杯をどんどん空けていった。そして。
 二人共樽を一つ空けた時にだった。
 マルコは遂に倒れた、そうして高いびきをかきだしたが。
 サイタはまだ座っていて杯を手にしていた、そのうえでその杯を空けて言った。
「わしの勝ちですか」
「そうだ」 
 勝負を最初から観ていたオウロッシュが答えた。
「間違いない」
「そうですか、しかしわしもです」
「もう飲めないな」
「はい、後はです」
 見れば顔は真っ赤だ、目は完全に座っている。
「寝させてもらいます」
「よくやった、そしてこれでな」
「マルコ様もですね」
「飲まない日が出来る、流石に毎日ではな」
 飲むこともというのだ。
「駄目だ、だからな」
「それでは」
「これで幾分かでも身体にいい」
 飲まない日が出来てというのだ。
「よしとしよう」
「それでは」
 こう言ってそうしてだった。
 サイタもその場に倒れ込んだ、こうして勝負は終わった。
 マルコはこの勝負の後約束通り週に二日は飲まない日をもうけた、すると彼はこう言ったのだった。
「飲まない日があると」
「はい、その分ですね」
「身体の調子がいいですね」
「左様ですね」
「どうもな、これまでは毎朝辛かったが」
 起きても酒が残ってだ。
「それがない日もあるとその分気分がいい、それにだ」
「身体も楽ですね」
「飲まれない日がありますと」
「左様ですね」
「そうなっている、やはり毎日飲んでは駄目か」
 マルコは周りにしみじみとした口調で述べた。
「身体によくないか」
「そうかと」
「ですからこれからもです」
「そうした日をもうけられて下さい」
「飲まれない日も」
「そうする、誓ったことは守らないとならない」
 絶対にというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「これからもですね」
「飲まれない日はもうけられますね」
「そうしよう、そのうえでセルビアとオウロッシュ様の為に戦っていこう」
 こう言って彼は飲まない日も置く様にした、するとだった。
 彼はこれまで以上に健康になり存分に戦える様になった、そうしてセルビアの敵を大いに打ち破れる様になった。
 それでだ、オウロッシュにもこう言った。
「やはり酒もです」
「程度があるな」
「毎日は流石に毒です」
「そのことがわかったな」
「左様です」 
 こう言った、そうして死ぬまで飲まない日ももうけていった。セルビアの酒好きの英雄の逸話の一つである。


飲み合い   完


                  2022・1・17 
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