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ウルトラマンカイナ

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特別編 ウルトラカイナファイト part1

 
前書き
◇今話の登場ウルトラマン

風祭弓弦(かざまつりゆずる)/ウルトラマンカイナ
 6年前、恐竜戦車の脅威から地球を救った若きウルトラマンと、その依代になった人物。紅い手足という特徴を持つシルバー族のウルトラ戦士であり、必殺技は腕を十字に組んで放つゼナリウム光線。現在の弓弦はBURKの隊員であり、年齢は22歳。
 

 
 6年前に起きた、恐竜戦車地球降下事件。その際にウルトラマンカイナの手で倒された件の個体は、キル星人という主人を失ったことで暴走状態に陥っていた。

 だが、その個体は単なる「暴走」だけで地球に来たわけではなかったのだ。

 ――恐竜戦車は、逃げ込んで(・・・・・)来たのである。
 理性を失った中であっても、本能で理解してしまうほどの恐怖。そのプレッシャーを齎す、「脅威」の影に怯えながら。

 そして、ウルトラマンカイナの登場から6年を経た今になって。人類はようやく、その「脅威」の存在と侵略の真相を理解したのだった。

 ◇

 ――恐竜戦車との戦いから6年。
 地球を狙う凶悪な異星人を阻止するべく、BURKに入隊した風祭弓弦と、戦士としての経験を重ねたウルトラマンカイナは再び一心同体となり、侵略者達の群れ(・・)に敢然と立ち向かっていた。

『ぐ、あ……!』

 だが、戦場となった東京はすでに半壊状態であり。大量のビルの残骸にもたれ掛かっているカイナも、満身創痍となっていた。
 この6年間で、カイナ自身もウルトラマンとしての実戦経験を重ね、誰もが認める一人前の戦士として成長したのだが。そんな彼の全力を以てしても、「多勢に無勢」だったのである。

『ふん……なんと脆い。この地球の守護を託されたウルトラ戦士が、そのような醜態を晒しても構わんのか?』
『ぐッ……!』

 5体もの強力な怪獣を従え、カイナを圧倒する青い異星人。テンペラー星人と呼ばれるその巨人は、両の足で立つことすら叶わなくなっているカイナを嘲笑うように、鼻を鳴らしている。

『我は此奴らを力で捩じ伏せ、従順な尖兵として調教した。……此奴らを倒せぬ程度では、我に挑む資格すらないということだ』

 宇宙恐竜ゼットン。
 宇宙怪獣エレキング。
 用心棒怪獣ブラックキング。
 一角超獣バキシム。
 火山怪鳥バードン。
 彼が己の力を以て従えている怪獣達でさえ、一体一体が並外れた戦力を持っているのだ。それら全てに同時攻撃を仕掛けられては、歴戦の勇士としてのキャリアを重ねたカイナでも、凌ぎ切るのは困難を極める。

『だったら……「頭」の貴様を仕留めて終わりにしてやるッ!』

 この苦境を切り抜けるには、敵の首魁を討って指揮系統を絶つしかない。そう判断したカイナは、頭部のカイナスラッガーを引き抜き、テンペラー星人の首目掛けて一気に投げ付ける。

『……言ったはずだ。今の貴様には、我に挑む資格すらない!』
『なにッ!? ぐわぁあッ!』

 だが、テンペラー星人は鋏状の片腕から発した光線で、カイナスラッガーの刃を容易く跳ね返してしまうのだった。彼の光線はそのまま直進し、紅い増加装甲を纏うカイナの胸に直撃してしまう。
 吹っ飛ばされたカイナの装甲には、小さな亀裂が入っていた。これまで一度も傷付いたことがなかったカイナテクターの損傷は、光線の威力を雄弁に物語っている。

『カ……カイナテクターに、傷が!?』
『ほう、我の光線にも耐える装甲か。なかなか良い物を使っているではないか』
『なんて威力なんだ……! 今のがあの、「ウルトラ兄弟必殺光線」って技なのか……!?』

 かつて、ウルトラマンタロウを筆頭とするウルトラ6兄弟が相対したテンペラー星人。その個体が使用していた最大火力の光線は、「ウルトラ兄弟必殺光線」と呼ばれている。

『ふん、何を言っている。これは、その名で呼ばれるような光線ではない。ほんの小手調べだ』
『なッ……!?』
『とはいえ、今の一撃で破壊出来ぬとなれば手加減などしてはいられまい。それほどまでに見たいというのであれば、見せてくれよう。……我にとっての、必殺光線をな』

 だが、カイナの目の前にいる個体は、不遜に鼻を鳴らしてそれを否定した。その名を与えるような威力の技ではない、と言うのだ。
 彼は己の光線にも耐えたカイナの装甲すらも破壊するべく、全身の力を両手の鋏に集中させ――光線状のエネルギーとして、一気に解放する。

『ぐわぁあぁあぁあッ!』
『……冥土の土産に覚えておくがいい。これが我の必殺光線……星という世界をも絶つ咆哮、「絶世哮(ぜっせいこう)」だ』

 その威力は、もはやカイナの理解を超越していた。これまでどのような攻撃も跳ね除けてきたカイナテクターは、瞬く間に粉々に砕け散ってしまったのである。
 さらに、増加装甲という犠牲を払ってもなお衝撃を殺し切れず、カイナの巨体は激しく吹っ飛ばされてしまうのだった。胸のカラータイマーは、すでに赤く点滅している。

『く、くそッ……負けてたまるか……! オレは、オレ達は絶対にッ……!』

 それでも闘志だけは折れることなく、カイナはよろけながらも立ち上がっていく。
 綾川梨々子との結婚式を来月に控えていた、弓弦にとっても。友として、そんな彼らを祝福したいと願うカイナにとっても。これだけは絶対に、負けられない戦いなのだ。

 だが、増加装甲を失った今の彼だけでは、テンペラー星人率いる怪獣軍団を阻止することなど出来るはずもない。
 状況は、絶望的であった。
 
 

 
後書き
 久方振りに、新章開幕でございます(´-ω-`)
 
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